開催概要
京都府とMonozukuri Ventures(MZV)が共催するプログラム「Kyoto Acceleration Program(KAP)」の成果報告会が3月11日に京都経済センターで開催されました。
KAPとは外部リソースを活用した大企業における新規事業創出を目的とし、大企業から2, 3人のチームを組んでいただき、京都府とMZVがコネクションを持つ外部リソース(経営人材、専門家、スタートアップ)を活用して、予算獲得に繋がる事業計画の立案に取り組むプログラムです。
第1回目となる今年度は、島津製作所様、SCREENホールディングス様、マクセル様と共にプログラムを進めてまいりました。その成果報告会の様子について以下レポートをお届けします。
プログラム
京都府挨拶
基調講演I ソニーグループ 沼田氏「Sony Startup Acceleration Programの新規事業開発・支援事例」
基調講演II ギフモ株式会社 代表取締役 森實 将 様「パナソニックを休職。ギフモでしか出来なかったこと」
Kyoto Acceleration Program(KAP)概要説明
KAP参加企業(島津製作所/マクセル/SCREEN) 成果発表プレゼンテーション
パネルセッション(島津製作所/マクセル/SCREEN)
懇親会(飲食なしで名刺交換を中心)
京都府挨拶
京都府企画理事兼商工労働観光部長 鈴木様
イベントの冒頭では、京都府様から挨拶を頂きました。
「本日は外部リソースを活用した新規事業創出の成果報告会を開催いたしましたところ、大変多くの方にご参加頂くことができました。本当にありがとうございます。スタートアップが日本、京都からどんどん育って世界を席巻するという夢の実現に向けて、本日の報告会を契機に来年度以降も続けていけるよう取り組んでまいります。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。」
基調講演I Sony Startup Acceleration Programの新規事業開発・支援事例
ソニーグループ株式会社 Startup Acceleration部門 Open Innovation & Collaboration部 Business Design Team統括課長 沼田様
沼田様からは「あらゆる人に起業の機会を」をコンセプトに、ソニーが2014年から手がけるSony Startup Acceleration Program(SSAP)の概要とこれまでの新規事業開発・支援事例、ソニーの社内起業の歩みと仕組みについてご講演いただきました。SSAPは、これまで19件の事業化と165件の社外向けサービスの提供実績があります。
基調講演II パナソニックを休職。ギフモでしか出来なかったこと
ギフモ株式会社 代表取締役 森實様
ギフモは味も見た目もそのままに料理を柔らかくするケア家電「DeliSofter(デリソフター)」を製造販売するパナソニックからカーブアウトしたスタートアップです。講演では、パナソニックでの新規事業創出・カーブアウトの仕組み、それらを活用したご自身の経験についてお話いただきました。
Kyoto Acceleration Program(KAP)概要説明
株式会社Monozukuri Ventures プリンシパル 辻本
Yumscroll元CEO 水上様
弊社の辻本からは、KAPの概要と実施内容、次年度の構想についてご説明いたしました。KAPとは、外部リソースを活用して新事業のタネを考え、プレシードのスタートアップを模して資金調達/予算獲得に進めるレベルの事業計画を立案するアクセラレーションプログラムで、特色は下記となります。
・大手企業内での新規事業企画とは異なり、個人の想い(WILL)からスタートをし、課題の深堀りを丁寧に行い、ソリューション仮説と検証方法の検討に注力する
・起業/資金調達経験者のアントレプレナーがバーチャルCEOとしてチームをリード
・デモデイでは普段、投資業務を行うベンチャーキャピタリストがカーブアウトを想定した場合の投資関心を判断
11月から始まった3ヶ月のプログラムの中で、半分以上を課題の深堀りに費やし、誰の何を解決するのかを徹底的に追求しました。後半ではソリューション仮説に対してユーザや専門家ヒアリングを重ねました。参加者は本業の傍、週に最低4時間をプログラムにコミットしていただき、大変だったと思いますが、普段の業務とは違った、外部リソースを活用したスタートアップ的な新規事業の創出プロセスを体感できたことと思います。
KAPでバーチャルCEOとして各チームを牽引して頂いた水上様からは、KAPが他のアクセラプログラムと違う点として、個人の想いや課題の深堀りを重視すること、参加企業間での横の繋がりの重要性をお話しいただきました。
KAP参加企業 成果発表プレゼンテーション
島津製作所様:働く人のメンタルヘルスサポートサービス「Menteller」
島津製作所 垣尾様
新型コロナウイルス流行による自粛や感染への恐怖、リモートワークの一般化に伴い、メンタル疾患を抱える人が増加しています。社員の症状が悪化し休職に至った場合、企業は1人当たり422万円のコストがかかると言われています。そのため企業は対策としてストレスチェックやカウンセリングを行っていますが、アンケートや会話では状態が定量的にわかりません。そのため、改善しているかの判断も難しいです。Mentellerは、生体計測によるメンタルの可視化とレジリエンス向上プログラムによるメンタルの向上を組み合わせ、社員の健康に貢献します。
マクセル様:ライブテラリウム
マクセル 長沼様
日常生活で悩みや不安を感じている人の割合は6割を超えています。こうした状況の原因として、情報量の増加、時間のゆとりの増加、悲観的に物事を捉えてしまう脳の特徴があります。多くの情報に触れるほどネガティブになってしまい、不安になってしまうというメカニズムです。瞑想はこうした課題に対して有効と言われていますが、長時間無心の状態を保つことの難しさに多くの人が直面しています。そこで、不確定な要素や自然を組み合わせたライブテラリウムで長時間無心で眺めてしまう状況を作り出します。空気や水の制御、空間ディスプレイにマクセルの技術を応用します。
SCREENホールディングス様:水と光で作る新たなエネルギー「Hydlight」
SCREENホールディングス 北村様
カーボンニュートラルや地政学リスクの観点から、枯渇性エネルギーから再生可能エネルギーへの転換が進んでいます。その中で水素は2050年に8兆円規模の市場に成長すると推定されており、これからの社会を支えるエネルギーとして注目されています。しかし、製造時にもCO2を排出しないグリーン水素は製造コストが化石燃料に対して高く、水素社会実現の障壁となっています。Hydlightは、光触媒を用いて太陽光と水から水素を作る人工光合成で必要となる光触媒シートを、SCREENが培ってきた大面積、低コストな膜製造技術を応用して製造する技術です。
パネルセッション
左から水上様、島津製作所 垣尾様、SCREENホールディングス 平井様、マクセル 新谷様
パネルセッションでは、KAPにご参加いただいた方々に、感想やいつもの業務との違いなどについてざっくばらんにお話しいただきました。その中で、
「自分で課題を見つけて強い意思で実現していく起業家の方との交流はかなり刺激を受けたので、そういうマインドを社内に持ち帰って広げていかないといけないという使命感が得られました。」
「何から始めていいのか分からないという状況から、起業経験のある方や技術に詳しい方、現場に詳しい方の話を聞いていくうちにアイデアがおぼろげながら見えてきました。また、様々な方の意見やアイデアを取り入れながら、アイデアを改善していく過程は大変ながらも楽しかったです。」
「以前は起業や新規事業に対して一線を引いてしまっていましたが、今回のプログラムを通してその線を取り払うことができました。」
といった感想を頂きました!
懇親会
報告会終了後は懇親会が行われました。今回はコロナ禍ということもあり、現地で参加された方のみによる密を避けながらの名刺交換会となりましたが、皆さん交流を深めておられました。
改めてご応募いただいた全ての皆さま、ご協賛いただきましたパートナー企業の皆さま、運営にご協力頂きました皆さまに感謝を述べさせて頂きます。本当にありがとうございました!
次回のKAPは、規模をより拡大して行う予定です。さらに、KAP卒業後の事業化フェーズに対する新たなフォロー企画も準備中です!詳細につきましては4月以降、弊社ウェブサイトで公開します。ご相談、ご質問も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。