スタートアップのモノづくり支援

2020年11月12日の日刊工業新聞「グローバルの眼」に掲載された当社牧野の記事を再掲します。
※本記事の転載は日刊工業新聞の許諾を得ています。
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ベンチャー・キャピタルでスタートアップへの投資の経験を積んできた私は2015年に独立し、ものづくりベンチャーに特化した支援プログラム「Makers Boot Camp」を立ち上げた。開発に悩むスタートアップに投資し、その資金を元手に試作に特化した京都の中小企業ネットワークである「京都試作ネット」に開発協力してもらうという座組だ。
プロ同士の取引であれば、ものづくりはロジックで完結する。仕様書を基に調達コスト、工賃、歩留まり率などを弾き出し、量産までのスケジュールができあがる。しかし、スタートアップは製造業以外の世界からやってくることが少なくない。そのため、プロ同士では阿吽の呼吸で通じていたやりとりが成立せず、スタートアップと中小企業の間の溝が広がる。我々も初期は両者の溝を埋めるのに苦心した。契機となったのは「スマートマット」という製品だ。マットの上に在庫品を載せて重量をモニタリングし、一定の軽さになった時点で追加在庫を自動発注する。考案したのはIT業界出身の若者たちだ。他の企業と作った試作品を基に我々で作り直し、ユーザーテストを行い、手応えがあったものを量産まで進めることに成功した。現在は3万台以上を生産し、破竹の勢いで成長している。
ここで我々が気づいたのは、おせっかいなぐらい先回りしておくことの重要性だ。スタートアップがはまりがちな落とし穴を、あらかじめ中小企業が先回りしてケアする。発注元からの指示を待つのではなく、率先してリードし、量産までの道案内人として役割を果たすことが重要だったのだ。

設立から現在に至るまでの3年強で30社以上に投資し、70件以上の開発案件を支援している。優れた技術を持つ日本のスタートアップを海外に展開する取り組みも始めた。国内のスタートアップを対象に、プレゼンテーションによるコンテストを2017年から毎年実施している。上位入賞者を海外のコンテストに招待し、海外の事業会社や投資家に引き合わせるのが目的だ。IT分野では全く見向きもされなかった日本のスタートアップだが、ものづくり分野では競争力がある。2017年に京都で創業したmui Labは我々の投資と開発支援を経て、木製スマートホームデバイスを製品化。国際的な展示会で大賞を獲得するなどの成果も生まれている。
日本のスタートアップだけでなく、海外のスタートアップへの支援も拡げるために、ニューヨークにも拠点を持ち、米国スタートアップへの投資も積極的に行ってきた。2021年以降は海外のスタートアップへの投資と支援をさらに強化する予定である。次回はUSでの投資実務を担っている関氏からみたニューヨークの現状をお伝えする。

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