#001_なぜVCはハードウェアに投資したがらないのか?

Monozukuri Ventures 代表の牧野です。
ここ10年は世界市場、国内市場の両市場ともスタートアップによる資金調達金額は増加傾向にあり(2022年は金利上昇等もあり急減に減少)、世界中のユニコーン企業数も増加傾向にありました。それに伴いハードウェア(以下:HW)スタートアップのユニコーン企業の絶対数も増加しており、ユニコーン企業の約1割がHWスタートアップというと「え、そんなに?」と思われる方もいるのではないかと思います。
この数字だけを聞くと一見ポジティブな傾向に見えますが、HWスタートアップの資金調達は厳しい環境が続いています。
では今回はなぜVCはHWに投資したがらないのかについてお話してみたいと思います。

「VCはHWに投資したがらないのか」と言われる主な理由はHWスタートアップの3つ特徴と関係していると考えています。

1.市場ニーズに合致するまでに時間がかかる

近年のスタートアップでは、アジャイル開発といって顧客のフィードバックを得ながら製品改良を繰り返すことが一般的になっています。ソフトウェア(以下:SW)ではそうした顧客のニーズに柔軟に対応できるような開発環境が整備されており、常に顧客の反応を見ながら市場ニーズにあわせ急成長する事が可能になっています。HWの世界でもアジャイル開発の環境が徐々に整備されつつありますが、SWと比較すると「ものを作る時間とコスト」が純粋にかかってしまい、市場ニーズにアジャストするのに時間がかかっています。

2. 製品ローンチの不確実

次に市場ニーズを満たす製品を見つけることが出来たとしても、試作品と量産化では求められるスキルやネットワークが全く異なるということです。こうした違いを理解していないために、HWの特に量産化の設計・製造が計画通りに進まず、ローンチ時期が延期になってしまうことがあります。他にもサプライチェーンが災害や感染症など外部環境の影響を受けやすいことも挙げられます。

3. マネタイズまでが複雑

最後にマネタイズの仕方です。最近、スタートアップではサブスクリプションモデルが主流となっており、HWスタートアップも例外ではありません。ただお客さんの手元に届くまでのフローがSWとHWのスタートアップでは異なっています。SWの場合、開発したプロダクトをインターネットやアプリストアなどに公開すれば配信可能です。しかし、HWは製品を売るための仕組み作りが複雑です。例えば、流通一つを取っても海外に配送するとなると認証取得問題や在庫問題、配送方法など検討項目が山積みです。また販売した後にも故障や修理への対応などアフターサービスも手間とコストがかかるビジネスでもあります。

HWはSWと比べると「市場ニーズを満たす製品を作るのが困難」「製造面での予想不能なリスクが多い」さらに「販売や流通も複雑」といった事情があり、「スケールするまでに時間が必要」が一般となっています。これが早期のExitを期待するVCにとってみると、あえてリスクの多いHWに投資しようとするインセンティブがなくなっていると言えます。事実、VCから「HW開発を止めるなら投資をする」と言われることも珍しくありません。 しかし、ビジネスの特性上、既存のハードウェアでは要件を満たせず、HWの開発が必要不可欠な場合もあります。またSWとHWの垣根がなくなることにより、ビジネスの可能性はより広がると考えています。

なぜMonozukuri Venturesは困難に挑戦するのか?

私達は、HWの負の面よりも、正の面に着目して、「どうすればHWスタートアップのスケールの時間を短縮できるか」を考えました。その一つがHWの課題を正しく理解すること、そしてHWスタートアップが抱える課題を乗り越える体制を自ら作り、そうしたリスクをコントロールすることに挑戦しています。
1つ目は京都試作ネットをはじめとする、スタートアップのプロダクト開発において信頼のおける中小試作企業やEMS企業とのネットワークを日本全国に構築していることです。またファンドの出資企業等を中心に大手事業会社とのネットワークを活かし、製品を販売するための仕組み作りなどもサポートしています。
2つ目がメーカー出身者でHW開発をリードしてきた経験豊富なメンバーがプロジェクトマネージャーとしてスタートアップと伴走することです。これまで150以上のプロジェクトを支援してきており、HW開発の経験が全く無いスタートアップが当社の支援を通じて10万台近い生産ができるようになったり、当社が関わったことで50%以上のコストダウンにつながった事例もあります。
そうは言ってもまだまだHWスタートアップにとって「Hardware is Hard」の環境はあります。ただこうしたHW開発のリスクを乗り越えることは、参入障壁が高いビジネスで確固たるポジションの確立にもつながりますし、何よりビジネス自体の可能性を大きく広げることができると考えています。
Monozukuri VenturesはこれからもHWスタートアップに積極的に投資をしていきますし、スタートアップの皆さんと新しい世界を作っていけたらと思います。

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Monozukuri Ventures CEO。愛知県出身、京都に住んで17年。ずっと関西中心にスタートアップに関わる仕事をしています。今は京都の梅小路エリアにてスタートアップ、アーティスト、クリエイターが集うような街づくりにも挑戦中。1児の父親として育児も頑張ってます!!

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