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#007_地方だからの強みがある。京都のスタートアップエコシステムの魅力と可能性

Monozukuri Ventures(以下、MZV)代表の牧野です。 私は、2005年からずっと関西でスタートアップに関わる仕事をしてきました。2015年に京都でMonozukuri Venturesを設立し、今もなお、「なぜ関西/京都なんですか?」という質問を受けることがあります。そこでなぜ関西/京都で活動しているのか、また関西や京都の特長って何なのか、をお話をしてみたいと思います。

2020年に内閣府主導で「世界と伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成」が進められ、関西(大阪・京都・神戸)もその一都市として採択されました。これにより様々な整備が進んでおり、関西のスタートアップの環境は着実に盛り上がっていると感じています。Monozukuri Venturesが活動拠点を構える京都では、京都大学を中心に数多くのディープテックスタートアップが生まれ、数十億円規模の資金調達も実現しています。実際、京都のスタートアップ数は約540社(2023年11月時点)、資金調達額も161億円(2023年上期)となり、東京に次ぐ全国第2位に位置しています。 ただし、東京のスタートアップ数は10,000社を超え、資金調達額は2,608億円と15‐20倍の差があり、現状では「スタートアップの東京一極集中」が正直な感想です。 グローバルな視点で見ると、アメリカでもシリコンバレーが主流ではありますが、シアトル、ボルダー、オースティン、マイアミ、ピッツバーグ等の地方都市でもそれぞれ独自のエコシステムが構築されています。私自身は、関西にも独自のスタートアップのエコシステムがあることが、日本全体のスタートアップが多様化するし、また経済にも寄与するという信念から京都/関西を拠点に活動してきました。 実際に関西のスタートアップエコシステムに関わる中で関西にも様々な特長があることが分かってきました。それがある意味、東京とも異なるスタートアップエコシステムの構築に繋がると信じています。

特長1:モノづくり

関西の特長の1点目は「モノづくり」です。関西は古くから繊維業、製薬企業、電化製品など多くの大企業が生まれた土地であり、これらを支える中小企業が数多く存在しています。モノづくり企業やネットワークは関西の一つの特長であり、Monozukuri Venturesも関西の強力なモノづくりネットワークの一つである京都試作ネットと連携し、スタートアップの試作量産化を支援する事業としてスタートしました。

特長2:食文化

2点目は「食文化」です。食自体がそもそも独自色がありますが、大阪の粉もんや京都の京料理はその中でも一定の地位やブランドを確立しています。大阪や京都は日本の中心だったことから日本中から様々な食材が集まり、そうした食材を調理する道具や発酵などの加工技術、調理方法が進化しました。2013年に京料理はユネスコ無形文化遺産にも登録されました。

特長3:考え方や価値観

そして最後が「考え方や価値観」です。京都で会社をスタートさせたときに、先輩経営者から「牛の涎(よだれ)」のような事業を目指しなさいとアドバイスされました。牛の涎は途切れるようで途切れない、事業もこれと同じで長く続けていけば必ず事業が花開くことがあるというアドバイスでした。つまり京都では「長く続ける」ことに対して非常に重きを置いています。 また大阪ではサントリーのDNAとなっている「やってみなはれ」精神ではないかと思います。以前、外資系企業の方とお話する機会があり、日本に来て最初に顧客になってくれたのは関西企業だったと聞いたことがあります。まずは試してみようというマインドが大阪企業にはあったのではないかと思っています。

Monozukuri Venturesを創業当初から応援していただいてるサンブリッジグループのアレンマイナーさんが、関西の特長として「Deep Thinker」という言葉で表現されていました。これはどんな状況でも明るく、笑いに変えながら、物事の本質を突き詰めていくということだと理解しました。関西のスタートアップエコシステムの目指すべき姿を考えたとき、こうした関西の特長をより洗練させ、日本全体や世界中にアピールしていくことが大切ではないかと考えています。またこうした独自性があるからこそ、シリコンバレーや東京などの強力なスタートアップエコシステムとも連携が進む可能性があると考えています。

サンフランシスコやNYとは一線を画する京都が目指すスタートアップエコシステム

地方(ここでは敢えて関西も含めて)でスタートアップに携わる中で、一般的なスタートアップのエコシステムで捉えればシリコンバレーや東京との差は正直広がっていると感じます。この現実を直視せず「シリコンバレーや東京を目指す」と掲げても、二番煎じになるだけで、よりその差は拡がると危惧しています。現場にいると見えないのも事実ですが、私はその地方にしかない強みや特長が必ずあると思っています。すごく勇気がいることですが、長い目で見た時にそうした地方の特長や良さを活かすことが、今後のスタートアップエコシステムを構築する上で大切になると信じています。 私たちは京都の梅小路エリアで地域金融機関等と連携しながら、モノづくりのスタートアップ、伝統工芸、アーティスト等のクリエイティブな人たちが集まる町づくりを行っています。私達なりに独自のエコシステムを目指して活動していますので興味ある方は是非梅小路にお越し下さい。

Monozukuri Venturesは梅小路京都西駅エリアの新拠点「Umekoji MArKEt」に移転しました

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Monozukuri Ventures CEO。愛知県出身、京都に住んで17年。ずっと関西中心にスタートアップに関わる仕事をしています。今は京都の梅小路エリアにてスタートアップ、アーティスト、クリエイターが集うような街づくりにも挑戦中。2児の父親として育児も頑張ってます!!

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