米国でスタートアップ投資を担当している関です。
Monozukuri Ventures（以下、MZV）は2022年にカナダ・トロントに現地法人を立ち上げ、2023年4月から活動を開始しました。

2023年6月24日からトロントで開催されるスタートアップ・カンファレンスCollisionには、MZVのCEOである牧野も参加し、日本企業と現地のスタートアップの橋渡しに臨みます。

本日は、なぜトロントに拠点を作ったのか、についてご説明します。

ニューヨークを中心に東海岸で活動

MZVは、「ハードウェア」や「製造業イノベーション」分野に特化したVCとして、2017年から日本・京都と米国・ニューヨークを中心にスタートアップ投資をしております。

米国でのスタートアップ投資というと、シリコンバレーに進出するのが一般的です。しかし、シリコンバレーは、起業家もVCも、SaaSに特化しています。MZVが特化するハードウェアやディープテック、製造業向けソリューションには向いていません。

特に、日本が強い製造業向けのスタートアップは、米国でもVCなどの投資家が少なく、なかなか立ち上がってこないのが実情です。

ハードテックやハードウェア系ディープテックへのシード投資を進めてきたMZVでは、こうした成長分野の影で、成長機会を持ちそうなスタートアップを、シード期から投資するべく活動を続けてきています。

MZVは、2014年にまずテック・シティ化を進めるニューヨークを拠点にし、2016年にはニューヨークのスタートアップ向けのアクセラレーター・プログラムMonozukuri Bootcampを京都で開催。翌2017年からニューヨークのスタートアップに対するベンチャー投資を始めました。

2017年にはピッツバーグのハードウェア・アクセラレーターAlphalab Gearと提携し、すべてを英語で実施するビジネスプラン・コンテストMonozukuri Hardware Cupを大阪で開催。優勝チームなど3社を、ピッツバーグの世界決勝に送り出しました。Alphalab Gearとの関係を活かし、2017年末にはピッツバーグのスタートアップへの投資を開始。以降、ロボットやAIの分野で、米国トップのCarnegie Mellon大学との関係を構築し、独自のエコシステムを構築しています。

2020年のコロナ禍以降は、ビデオ会議を使って、地元以外の地域でのスタートアップ投資を開始しました。それまでシードVCは、目の届く範囲にあるスタートアップにしか投資しないのが常識でした（「投資を受けたければシリコンバレーに移転しなさい」）。しかし、2020年以降は、シリコンバレーVCの多くが、シリコンバレー外のスタートアップに投資しています。

MZVも2020年以降は、ニューヨークとピッツバーグの外での投資を強化し、現時点で8つの州に投資先スタートアップが拠点を構えています。

シード投資にとっての命綱は、エコシステムとの結びつき

しかし、スタートアップ・エコシステムとの強い結びつきがないと、シード投資はなかなかうまくいきません。メディアなどに取り上げられてからアクセスしたのでは、シード投資としては、すでに出遅れているといっても過言ではありません。

そこでMZVでは、ニューヨーク、ピッツバーグに続くエコシステムとして、カナダ・トロントでの活動を強化しています。

2019年にはトロントに現地法人を設立することを決め、2020年春ごろに拠点を開くべく活動していました。コロナ禍で計画の一時凍結を余儀なくされましたが、2022年になり計画を再開。2023年4月に、現地で投資メンバーが活動を開始しました。

トロント周辺は長らく北米自動車産業の一大拠点として発展してきたため、日本企業にも馴染みがある地域です。トロントが属するオンタリオ州は、五大湖の北側に位置し、自動車産業を中心に、世界の製造業が工場を持つ、世界的な製造業の拠点です。

しかもトロントは、2010年代初頭に、ディープ・ラーニングの分野で著しい実績を上げて、それ以来、AI研究の世界的なメッカとして注目を集めています。

2012年に行われた画像認識の世界大会「ImageNet」で、トロント大学が2位以下に圧倒的な差をつけて優勝。「ディープ・ラーニング」が一気に注目されました。優勝チームを率いた「AIのゴッドファーザー」の一人であるヒントン教授はGoogleに入り、その後2018年にチューリング賞を受賞しています。

MZVは、「製造業」と「AI」のイノベーションを推進するため、トロントに新たな独自スタートアップ・エコシステムを作っていく意気込みです。

北米の「ハードウェア」「製造業イノベーション」にご興味がある方は、是非ご連絡ください。

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