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【イベントレポート】Deep Tech Forum NYC Climate Week @HAX/SOSV
本レポートは、2024年9月24日にニューヨーク郊外のニューアークで開催された「Deep Tech Forum NYC Climate Week @HAX/SOSV」のイベントレポートです。https://deeptechforum.us/ にてご確認ください。
Deep Tech Forumは、Monozukuri Venturesが主に北米で開催するディープテック・エコシステム向けのカンファレンスであり、開催地のエコシステムにおいて重要な役割を担う投資家や大企業が参加します。過去には、シリコンバレー、ニューヨーク、トロント、ピッツバーグなどで開催されてきました。 詳しくは、Deep Tech Forumの公式サイト(英語のみ)2024年9月24日、HAXで開催されたDeep Tech Forumにて、SOSVのGeneral Partnerであり、HAXの最高科学責任者(Chief Science Officer)を務めるSusan Schofer博士が基調講演を行いました。テーマは「ハードテックはネットゼロを実現できるか? グローバルに安定したサプライチェーンのためのイノベーション」。
彼女は、気候変動やサプライチェーンの課題に対し、ハードテックのイノベーションがどのように貢献するかを具体的に解説し、グローバルな視点から技術革新の重要性を語りました。Susan Schofer博士はHAXの最高科学責任者(Chief Science Officer)を務める
1.エネルギーの独立性と重要鉱物の確保
Schofer博士は、エネルギー独立が気候変動対策の中心であり、特にリチウム、コバルト、ニッケルなどの重要鉱物が、エネルギー貯蔵や電気自動車(EV)のバッテリーに不可欠であることを強調しました。これらの鉱物の安定した供給が、持続可能な未来の構築において重要であると述べました。
また、鉱物のリサイクル技術や代替材料の開発が、サプライチェーンの持続可能性を向上させる点にも触れました。2.ロボティクスと製造業の自動化
製造業における自動化と、ローカルなサプライチェーンの再構築についても強調しました。グローバルなサプライチェーンの混乱に対応するため、ローカルな供給網と製造プロセスの自動化が持続可能な製造業の未来を築く上で重要であり、これにより企業は効率的で柔軟な生産体制を築きつつ、環境負荷を軽減できると指摘しました。
さらに、製造の自動化とデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、地域ごとの生産が可能になり、効率向上と持続可能な生産モデルの実現が期待されています。これにより、グローバルな輸送依存度が低下し、炭素排出量の削減に寄与します。3.サプライチェーン技術と輸送の未来
Schofer博士は、持続可能な輸送技術がいかにサプライチェーン全体の効率化に貢献するかについても言及しました。都市物流やグローバルな輸送におけるイノベーションが進んでいると指摘し、特にマイクロ貨物船の導入が小規模で効率的な海上輸送を実現し、CO2排出を抑制する上で重要な役割を果たすと述べました。このような技術が、従来の大型船に比べてよりクリーンなエネルギーで運航され、短距離の輸送効率を飛躍的に向上させる可能性があります。
さらに、完全電化されたコールドチェーン技術は、食品や医薬品の輸送において環境負荷を大幅に軽減し、持続可能なサプライチェーンの一環として期待されています。都市部でのスマート物流システムの発展も、より効率的で環境に優しい輸送ソリューションを提供し、持続可能な経済成長を支える要素としてますます重要視されています。まとめ:ハードテックによる持続可能な未来の構築
全体を通して、Susan Schofer博士は、ハードテックが持続可能な未来を実現するための重要なカギとなると強調しました。特に、エネルギー、製造、サプライチェーンの分野において、企業やスタートアップが連携して技術革新を推進することで、ネットゼロ達成に向けた取り組みが加速されることが期待されています。
基調講演の全編は、以下の動画で視聴いただけます。パネルディスカッションの概要
続いて、地元ニューヨークの識者をパネリストに迎えて「 ニューヨークが新たなディープテックの中心地に〜ロボティクス、モビリティ、都市技術の最前線~」と題したパネルディスカッションが行われました。
登壇者には、ニューヨークのディープテックの専門家であるNew York Robotics Network(NYRN)のExecutive DirectorであるJacob Hennessey-Rubin氏、HAXのCTOであるJi Ke氏、World Economic Forum(世界経済フォーラム)の先端製造・バリューチェーン部門のInitiatives and Community Leadを務めるStacey Weismiller氏が参加し、近年注目されるニューヨークを中心とした気候変動テックを支える動きが議論されました。左からStacey Weismiller氏、Jacob Hennessey-Rubin氏、Ji Ke氏。モデレーターはHAXのNaomi Stevens氏が務めた
1.都市技術と持続可能な未来の構築
ニューヨークの都市技術(Urban Tech)に焦点を当て、持続可能な未来に向けた技術の進化について議論されました。パネリストたちは、ニューヨークだけでなく、ニューヨーク・メトロエリア全体を考慮すべきだと強調しました。この地域はアメリカ最大の人口圏であり、そのサプライチェーンは周辺の都市と密接に連携しているため、ニューヨーク市単独ではなく、より広域な視点で見る必要があると述べられました。
Ke氏は、都市部のインフラをスマートにするための技術、特にエネルギー管理や交通システムの自動化が、都市の持続可能性向上に大きく貢献していると述べました。また、彼は、HAXのスタートアップが開発している完全電動化されたモビリティソリューションや、都市インフラの自動化技術についても触れ、ニューヨークがこれらの技術革新を推進する場として最適であると指摘しました。 さらにWeismiller氏は、こうした都市技術が地元のコミュニティと企業の連携を強化し、持続可能なサプライチェーンの構築に寄与していると述べました。具体的には、都市部でのスマート物流システムの発展が、より効率的で環境に優しい輸送ソリューションを提供し、持続可能な経済成長を支える基盤となると指摘されました。こうした技術は、ニューヨークが世界に誇るべき先進的な都市技術の一例であり、今後もグローバルな都市課題の解決に向けた取り組みが加速していくことが期待されています。2.ニューヨークのディープテックエコシステムの進化
Hennessey-Rubin氏は、ニューヨーク市がロボティクスやモビリティなどの先端技術分野において急成長を遂げている背景には、豊富な人材や世界的な企業の存在があると述べました。特に、ニューヨーク市が進める「自律移動技術」の実証実験や、「ロボットを活用した都市インフラ整備」が具体例として挙げられました。
ニューヨークは、こうしたテクノロジーが都市の課題解決にどう貢献できるかを示す、理想的な実験場として位置付けられています。さらに、ロボティクス分野でのスタートアップと地元政府とのパートナーシップは、ニューヨークのディープテックエコシステムを強化しており、自律配送システムやロボットを活用した建設技術などが実際に導入されています。 Ke氏も、ニューヨークのロボティクスやモビリティ技術の進化が目覚ましい理由として、HAXをはじめとするアクセラレーターや投資家の積極的な支援が大きいと述べました。特にHAXでは、スタートアップが迅速に技術開発を行い、商業化できる環境が整っており、その一例として、ニューヨーク市内で展開されるラストマイル配送ロボットや、電動モビリティソリューションの開発が紹介されました。これにより、ニューヨークの競争力はさらに強化され、世界的なロボティクスとモビリティ技術の拠点としての地位が高まっています。3.ロボティクスとモビリティの最新トレンド
Weismiller氏は、ロボティクス分野における最近のトレンドとして、自律移動技術や製造業の自動化が急速に進んでいる点を指摘しました。彼女は、ニューヨーク市が都市型モビリティの実証実験を進めていることが、ロボティクスとモビリティ技術の発展に大きく貢献していると述べました。具体的には、ニューヨーク市が進行中のプロジェクトとして、都市内でのスマート交通システムの導入や、エネルギー効率の高い物流技術が挙げられました。こうしたプロジェクトにより、都市インフラがよりスマートになり、物流の効率化が進んでいます。
また、ニューヨークはグローバルな大都市であることから、ロボティクスやモビリティ技術の実装に理想的な環境を提供している点が議論されました。たとえば、スマートシティ化の取り組みや、自律移動車の普及が進む中で、ニューヨークは技術開発のハブとしてさらに重要な役割を果たしています。これにより、企業がニューヨークを拠点にして技術開発を行い、グローバル市場におけるプレゼンスを強化することが期待されています。まとめ:ニューヨークのディープテック拠点としての成長
パネルディスカッション全体を通して、ニューヨークがディープテックの拠点として成長する背景には、強力なエコシステムとグローバルな視点、多様なコミュニティの存在があることが明らかになりました。特にロボティクスやモビリティ、都市技術分野でのさらなる成長が期待されています。
パネルディスカッションの全編は、以下の動画で視聴いただけます。当社ニュースレターへご登録下さい。
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