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【イベントレポート】スタートアップCXO経験者のリスタートを支援するナレッジ共有セミナー
2025年9月2日(火)、東京都港区のPASONA SQUARE 16階にて、株式会社パソナマスターズ主催のイベント「スタートアップCxOの『リスタート』をどう活かすか」が開催されました。
本イベントでは、スタートアップ経営に挑戦したCxO経験者が次のキャリアでどう活躍できるのか、また大企業がそうした人材をどう迎え入れればよいのかをテーマに、多角的な視点から議論が交わされました。
起業や資金調達が増える一方で、エグジットやその後のキャリア選択がまだ限られている日本において、「挑戦の先」をどう社会的に位置づけるかが大きな問いとなりました。
クロストークセッション「スタートアップ経営のリアルと、リスタートへの視座」
本セッションは、牧野成将(Monozukuri Ventures)と中田光佐子氏(パソナマスターズ)によるクロストーク形式で進行されました。
話題のひとつとなったのは、日本と海外におけるスタートアップ環境の違いです。挑戦後にどのような道筋が用意されているか、その受け皿のあり方が国ごとに異なることが指摘され、参加者の関心を集めました。
また、大企業にとって外部の経験者をどう迎え入れるかというテーマも取り上げられました。従来の働き方だけでは語り尽くせない、新しい関わり方の可能性や、それを支える社内体制の重要性が示され、対話を通じて課題の奥行きが浮かび上がっていきました。
さらに、挑戦の「次の一歩」に関する知見をどう扱うかという論点にも触れられました。
情報として表には出にくい経験をどのように共有し、活かしていくか――
そのヒントがいくつも投げかけられ、クロストークならではの掛け合いを通じて議論が深まっていったのが印象的でした。
基調講演 「挫折のすすめ」
基調講演には、株式会社ドリームビジョン 代表取締役社長・平石郁生氏が登壇しました。平石氏は自身のキャリアを振り返りながら、「挑戦の意味」を問い直しました。
起業から上場、事業売却や撤退を経て、再び教育や投資に携わるまでの過程には、華やかな成果だけでなく数多くの試行錯誤や葛藤があったといいます。その経験を通じて、「意思決定を迫られる場面でのリアルな感覚」や「失敗とどう向き合うか」が次の挑戦につながる大切な資産であると語りました。
また、海外のスタートアップ事情にも触れ、シリコンバレーをはじめとするエコシステムでは、挑戦とリスタートが自然なサイクルとして根付いていると指摘しました。そこでは一度の失敗をマイナス評価ではなく、次の挑戦をより強くする糧として捉えられる文化があるのに対し、日本ではまだその風土が十分に根付いていないという現状があると語りました。
さらに、資金調達や投資トレンドに振り回されずに成果を出すためには、資金規模以上に「実装力」や「顧客課題に真摯に向き合う姿勢」が問われると強調。資金環境が不安定になりやすい今だからこそ、足元の実行力や地道な積み重ねの価値が高まっているとの見解を示しました。
最後に、大学教育や研修プログラムを通じて若い世代と接している経験を踏まえ、「挑戦が正しく評価される文化を社会にどう根付かせるか」が重要だと締めくくりました。成功も失敗も含めた一つひとつの経験を肯定し、次への橋渡しをしていくことこそが、エコシステムの持続的な成長を支える――その言葉には、会場の参加者も深くうなずいていました。
イベントを終えて
交流の場では、「制度面の課題が具体的に見えた」「同じ悩みを抱える人と意見を交わせた」といった声が聞かれました。実務にどう落とし込むかを考えるきっかけになったという感想も多く、参加者同士の新たなつながりが生まれていました。 今回のイベントを通じて浮かび上がったのは、「リスタート」を個人の終着点にしないという共通認識です。経験を産業全体の学びとしてどう活かすか、その方法論や仕組みづくりはまだ途上にありますが、議論を通じて方向性が少しずつ形になってきました。 そして何よりも、ここで交わされた知見を実際の制度や取り組みに結びつけていくことに、Monozukuri Venturesとパソナマスターズが今後とも積極的に取り組んでいきます。
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