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【イベントレポート】「大企業のオープンイノベーション最前線 ― 地域における製造業コミュニティの重要性」開催
2025年8月19日、京都 FabCafe Kyoto にてイベント「大企業のオープンイノベーション最前線 ― 地域における製造業コミュニティの重要性」が開催されました。
本イベントの主催は、製造業企業のクローズドコミュニティ「MIサロン京都」の前身となる、「KAPサロン」の生みの親、京都オープンイノベーションコミュニティ運営委員会、(京都府、京都リサーチパーク、Monozukuri Ventures)、株式会社ロフトワーク、 後援はデロイトトーマツベンチャーサポート、 協力は愛知県、兵庫県として開催されました。
また2025年度の「MIサロン京都」の第3回としても実施されました。
製造業企業の新規事業部門、スタートアップ、投資家、そして自治体関係者など、多彩な立場から30名超の現地参加と、多数のオンライン聴講者が集いました。2時間半にわたるプログラムでは、最新の事例や課題が共有され、今後の方向性について活発な意見交換が行われました。
プログラム
プログラムは以下の流れで進行されました。 ・ご挨拶 京都府 商工労働観光部 産業振興課 課長 安達 雅浩氏 ・イントロダクション:「スタートアップ × 大企業連携の取り組み」 Monozukuri Ventures 横溝 真衣 ・基調講演:「シリコンバレーにおけるハードテックVCの役割」 Matter Venture Partners 日本代表 高乗 正行氏 ・パネルセッション I:「中部/関西が目指すスタートアップエコシステム」 Matter Venture Partners 日本代表 高乗 正行 i-nest capital Partner 本蔵 俊彦 Monozukuri Ventures CEO 牧野 成将 ・パネルセッション II:「地域における製造業コミュニティ「『MIサロン』」 愛知県経済産業局スタートアップ推進課 主査 金丸 良 兵庫県産業労働部新産業課新産業創造 班長 高橋 桐子 ロフトワーク FabCafe Kyoto ブランドマネージャー 木下 浩佑 Monozukuri Ventures 横溝 真衣
基調講演に見るハードテックVCの視点
Matter Venture Partners 日本代表・高乗正行氏による基調講演では、シリコンバレーにおけるハードテックVCの役割が紹介されました。単なる資金提供にとどまらず、人材・ネットワーク・顧客候補を束ねながら事業を成長させる仕組みを構築することの重要性が強調されました。特に、ハードテック分野における成功の鍵は「スピード」と「信頼」であり、大企業が持つリソースをどう迅速に組み合わせていくかが、スタートアップの成長を左右するとの指摘は、参加者の強い関心を集めました。
パネルディスカッションで浮かび上がった課題と可能性
続くパネルディスカッションやイントロダクションでは、多様な視点から議論が展開されました。スタートアップと大企業の協業においては、技術検証の枠にとどまらず、初期段階から「アウトプットを意識した共創」を設計することの重要性が共有されました。成果を見据えた協業の仕組みづくりは、スピード感と信頼を両立させる上で不可欠であると指摘されました。
また、地域に根ざした製造業コミュニティの可能性も示されました。企業間の信頼関係や水平的なネットワークの強化を通じて、スタートアップのみでは実現できないサプライチェーンを構築することで新しい価値が創出されることが語られ、KAPサロンを前身とするMIサロンがその起点になり得ることが強調されました。
さらに、大企業の新規事業部門が直面する意思決定のスピードや透明性の課題についても具体的な論点が挙げられました。稟議や社内調整に時間を要する構造的な問題をどう克服するかは、多くの参加者が共通して抱える課題であり、解決の糸口を考えるヒントが提示されました。
自治体によるスタートアップ支援については、制度や補助に依存するだけでなく、現場に寄り添った実践や人的ネットワークの構築が重要である点が指摘されました。地域ごとの強みを活かした支援の在り方は、今後の展開に直結する実務的テーマとして大きな注目を集めました。
これらの議論は理論的な知見にとどまらず、参加者一人ひとりが「自社に持ち帰り、どう実践するか」を考える具体的なきっかけとなったのが印象的でした。
イベントを終えて
MIサロン京都第3回としても開催された本イベントは、基調講演を通じてハードテックVCの視点を共有し、パネルディスカッションでは協業や地域連携の可能性を多角的に探る場となりました。知識を得るだけでなく、参加者それぞれが次のアクションを考えるきっかけを持ち帰ったことが大きな成果といえます。今後もMIサロンは、製造業の新しい挑戦を支える場として進化し続けます。
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