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[Monozukuri Hub Meetup vol.11] スタートアップのためのオンラインプラットフォーム

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「Monozukuri Hub Meet up」の11回目が5月18日(木)MTRL京都で開催された。今回の題目は「スタートアップ向けのオンラインプラットフォーム」。「Monozukuri Hub Meet up」はハードウェアスタートアップ向けの支援サービスを提供しているMakers Boot Campにより定期的におこなわれているイベントである。モノづくりを志す学生、起業家、投資家、大企業のエンジニアやモノづくりエキスパートが集まり、毎回違うテーマについてオーディエンスも交えて語り合う場である。

Hardware Massive との共同で開催した今回のミートアップでは、多くのスタートアップが直面する「量産化」を始めとした問題を解消するためにどのようにオンラインプラットフォーム利用していくかということを中心に様々な意見が交わされた。ソフトウェアを扱うスタートアップと比較して、ハードウェアを扱うスタートアップならではの課題が議題にあがった。「競争ではなくパートナーシップ」は、本ミートアップの一つの大きなテーマともいえる。また、実際にハードウェアスタートアップの起業家が登壇し、よりリアリティのあるストーリーが多く語られたイベントであった。

スピーカーのプレゼンテーションに先駆け、Makers Boot Camp のSabrina Sasaki 氏が登壇者の紹介及び、同社の紹介を行った。

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ハードウェアスタートアップにとっての死の谷である量産化の問題を解決するため、Makers Boot Campは京都試作ネットと協力し、スタートアップが製品を量産化するプロセスの支援を行った事例を紹介した。Makers Boot Campは、投資家、スタートアップ及び国内外の主要機関と連携を進めているが、今後更に強固ものとしていく必要があると強調して締めくくった。

最初のセッションは、Hardware MassiveのGreg Fisher氏によるプレゼンテーションであった。プレゼンテーションは「皆さんの中で量産化プロダクトを開発している方、企画している方はいますか?」という問いから始まった。続いてハードウェアスタートアップの量産化には多くの問題があり、彼らが競争ではなくパートナーシップ、つまり連携することによってそれらの問題の解決を目指していることを強調した。そして具体的にエンジニアリングの莫大な費用を始めとした問題を取り上げ、スタートアップがその問題を乗り越えていく環境を作るためにHardware Massiveがどのような事を行っているかを紹介した。

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彼はハードウェアスタートアップを「物理的生産物をフルスケールの流通へとのせることが目的であるスタートアップ」と再定義した。

それを踏まえた上で、Hardware Massiveは

1)ネットワーキング 2)教育 3)リソースへのアクセス

をミッションとして掲げていると伝えた。

彼らは世界中に支部を持ち、ウェブサイト上でそれぞれの支部、スタッフ、イベント等の情報を共有し、またニュースやイベントを始めとした種々のリソースを提供していることにも触れ、ハードウェアスタートアップがアクセスできるグローバルなプラットフォームが実現しつつあることを示した。

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続いて登壇したLifeChairのKarlos Ishac氏は筑波大学の大学院生でもある。Lifechairは彼が起業した二つ目のスタートアップであり、スマホやパソコンの長時間使用やデスクワークによってもたらされる身体的問題や生産性の低下などの問題などを解決するためのプロダクトを開発している。姿勢改善の機能や、使用者の姿勢をチェックし、バイブレーションによって正しい姿勢へと導くといったような機能も兼ね備えている。

彼は幼少期から発明に興味を持ち、14歳の時には非公式のビジネスを行っていたと語った。彼はシドニー大学卒業後に職を探したが、母国のオーストラリアでは農業や海上関係の仕事が多く、どうしても興味を持てなかった。そんな時に、筑波大学のOMECHAに出会い、日本での進学を決意し、その飽くなき探求心で今までに医療用ロボットなど、様々なプロダクトを発明してきた。彼は現在のチームメンバーに、「一つのプロダクトに固執するな」と常々強調している。数々の製品を発明してきた彼の柔軟な考え方は、ハードテックスタートアップが生き残る為の重要なポイントとなるだろうと思わされた。

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前半のプログラムの最後に登壇したのは、日本のスタートアップであるNainの山本健太郎氏。彼は北海道大学で複雑工学などを学んだ後に、パイオニア株式会社にてカーナビや関連機器の開発、企画の担当をしていた経験もある。

彼は自分のことをスマートフォンをいちいち手に取るのも嫌なほど面倒くさがり屋だと言い、これを解決するためにアイズフリーのインターネットデバイスAPlayを開発した。また彼らはさらにスマートフォンと連携可能なオーディオに目をつけ、ワイヤレスかつ音声認識可能なデバイスの開発を行い、その量産化を目指している。

後半のプログラムは2つのパネルディスカッションがおこなわれ、第一部はのパネルディスカッションはHardware MassiveのFounder Greg Fisher 氏とMakers Boot CampのCEO Narimasa Makino氏の二人によって、ハードウェアスタートアップを支援する側の視点で議論が行われた。ソフトウェアスタートアップと比較して、ハードウェアスタートアップが直面する資金やネットワークに関する難しさについて触れ、オンラインプラットフォームの重要性についてお互いの意見を述べた。Greg氏は「多くのピッチイベント等のイベントが行われているが、一度きりのイベントではなく、継続的なコミュニティを実現したかったのでHardware Massiveを立ち上げた。競争ではなくコラボレーションを意識しており、非常にオープンな姿勢を大切にしている」と強調した。今日、様々なオンラインプラットフォームが乱立しているが、このHardware Massiveのオープンな姿勢はこれからのハードウェアスタートアップに欠かせない存在となりうると思われた。最後にGreg氏は日本のスタートアップに向けて、

「孤立化を避けオープンでありつつ、失敗を恐れずに世界へと挑戦するべきだ」

とメッセージを送った。

第二部のパネルディスカッションに先立ち、登壇者の一人であるPlengoerの富田敦彦氏が、同社が開発したPlencubeについてのプレゼンテーションを行った。

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彼は「私はテクノロジーが人間に取って代わるとは思いません、人間の生活を豊かにするものです」と語り、手のひらサイズに収まり、我々の生活の中で記録し、共有したい重要な瞬間を逃さず捕えてくれるアシスタントロボットPlenCubeを開発したと述べた。彼のチームは我々の生活をより楽しませてくれるプロダクトの開発を実現しようとしている。

そしていよいよ最後のパネルディスカッション「Challenges for Hardware Startups」が行われた。The Deckの森澤友和氏をファシリテーターに迎え、Nainの山本健太郎氏、LifeChairのKarlos Ishac氏、そしてPlengoerの富田敦彦氏の3人がそれぞれのスタートアップの取り組みや、今後の展望を語り合った。また、このセッションではオンライン上で質問を受け付けるサービスsli.doを用いてオーディエンス側からの質問を受け付けた。

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友澤氏がクラウドファンディングに関しての質問を投げかけたところ「重要な取り組みではあるが、支援者が増えることでチームのメンバーが満足してしまい、今後の取組に支障が出てくる危険性がある」というPLENGoerの富田氏の視点は斬新であり非常に興味深かった。また、会場からは「学生時代に行うべき活動へのアドバイスを受けたい」との質問が上がり、現役の学生であるLifechairのKarlos氏は、「できる限り早い段階でスタートアップのコミュニティに触れるべき」とアドバイスを将来の起業家へのエールとした。「チームをモチベートするためにどうしているか?」といった質問に関しては、Nainの山本氏は「私を始めとしてチームの皆も怠け者であり、だからこそ便利なプロダクトの開発を行いたいと思った」とユニークな回答をし、それぞれのスタートアップの特色が出た、バラエティに富んだ意見が聞け非常に面白いパネルディスカッションであった。セッションの最後にはそれぞれのスタートアップが次のステップに向かうために、資金調達およびクラウドファンディングの達成、そして最終的なプロダクトの完成などが必要であると述べ、本パネルディスカッションを締めくくった。

最後にMakino氏から、有意義なハードウェアエコシステムを作りあげ、今回同様のmeetupを始めとした活動を今後も続けていきたいと決意が述べられた。その後のネットワークセッションでは参加者とプレゼンターがざっくばらんに意見交換おこない、お酒を飲みながらのリラックスした雰囲気の中で今後のプロジェクトやアイディアについてそれぞれが語り合う場となった。

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文章:石井拓実(京都大学大学院生)写真:砂広今日子

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