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【米国VC投資額レポート: 2023年1月】シード投資は底打ち感、シリーズA以降は引き続き低調| Monozukuri Ventures

今回のレポートでは、2023年1月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。

プレシード・シードの動向

2023年1月のプレシード・シードの投資は昨年(2022年)の12月から投資金額・投資件数ともに増加しました。投資件数は依然として2020年以来最低の水準であり、投資先の選別が厳しくなっていることが伺えます。MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

プレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Tutor Intelligence(調達額:$4,162,206)

Tutor Intelligenceは協働ロボットを12ドル/時間(稼働時間)で提供するRaaS(Robot as a Service)企業です。ロボットを電源とWi-Fiに接続し、コード不要のグラフィックセットアップウィザードでセットアップするだけでロボットを稼働させることができます。Tutor Intelligenceは導入コストと運用コストを徹底的に削減することで、これまでロボットによる自動化のコストパフォーマンスが見合わなかった領域への導入を目指しています。

Tutor Intelligence公式HP

2. Xander(調達額:$1,400,000)

Xanderは聴覚障害者向けに、会話のキャプションを表示可能なARグラス「XanderGlasses」を開発しています(ARグラス本体はVuzix社の製品を使用)。WHO(世界保健機構)は2021年時点で15億人が難聴に苦しんでおり、2050年には25億人に増加する可能性があると報告しています。補聴器は高価で、難聴者に対して音を増幅して伝えることは効果的では有りません。XanderGlassesは一般的な補聴器よりも安価で、文字によって情報を伝えることで、騒音下や重度の難聴者でも使用可能です。

出典:Xander公式HP

3. Firefly Recovery(調達額:$1,000,000)

Firefly Recoveryはアスリートの疲労回復デバイスを開発する企業です。FDA認証を取得済みのFirefly Recoveryのデバイスは電気パルスにより神経を刺激し、血流を400%増加させます。これにより、筋肉により多くの酸素と栄養が行き渡り、回復が早くなります。オリンピック選手やプロのアスリートに使用されているこのデバイスは既に公式HPより購入可能です。

出典:Firefly Recovery公式HP

シリーズA以降の動向

2023年1月のシリーズA以降の投資は、投資金額・投資件数ともに最低の水準が続いています。米国ではVCの資金調達環境も悪化しており、しばらくは回復が見込めない状況です。MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

シリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Blues Wireless(調達額:$32,000,000)

Blues WirelessはMicrosoftの元Chief Software ArchitectであるRaymond Ozzie氏によって設立された、組み込み型セルラーソリューションを提供する企業です。Blues Wirelessの製品は、プロビジョニング、セキュリティ、クラウドデバイス管理を標準機能として搭載し、シンプルさと柔軟性により新規および既存の設計内に組み込むことができるため、コネクテッド製品の構築にかかるコストを軽減します。スタートアップから企業まで、800社以上の先進的な企業がBlues Wirelessの製品を使用しています。

出典:Blues Wireless公式HP

2. Photoneo Brightpick Group(調達額:$19,000,000)

Photoneo Brightpick Groupはロボットビジョンセンサーとインテリジェンスソフトウェアを提供するPhotoneo社の事業部門で、倉庫自動化ソリューションを提供しています。Photoneo Brightpick Groupのソリューションは、大規模、小規模のフルフィルメントセンターにおいて、注文のピッキング、集約、発送を自律的に行い、95%の労働力と50%コストを削減し、倉庫の密度を250%向上させることができます。General Motors、Volkswagen、KUKAなどの大手企業がPhotoneo Brightpick Groupのソリューションを使用しています。

出典:Photoneo Brightpick Group公式HP

3. Atomos Space(調達額:$16,217,041)

Atomos Spaceは宇宙空間で衛星やペイロードを任意の軌道に輸送する宇宙常駐型のOTV(Orbital Transfer Vehicle / 軌道間輸送機)を開発する企業です。New Glenn、Falcon Heavy、Starshipなどのロケットは、衛星の最終的な軌道高度よりも打ち上げるペイロードの質量を最大化するために、ペイロードをLEO(Low Earth Orbit / 低軌道)まで運びます。その後、Atomos SpaceのOTVでペイロードを目的の軌道に運びます。この二重構造により、打ち上げコストを最大50%削減することができます。Atomos SpaceのOTVは、高度250kmまでのあらゆるペイロードにドッキングし、軌道の上昇、軌道傾斜角の変更、LTAN/RANの変更、ペイロードの位相調整が可能です。

Atomos Space公式HP

※産業の区分:What Industries are included in Crunchbase?

ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。

来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。

調査:投資部門インターン川村

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