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【米国VC投資額レポート: 2023年2月】シード投資は回復基調、シリーズA以降は引き続き減少傾向| Monozukuri Ventures

今回のレポートでは、2023年2月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。 1月のレポートはこちらからご覧ください。

プレシード・シードの動向

2023年2月のプレシード・シードの投資は、1月からプレシードの投資金額は増加し、シードの投資金額が減少した結果、プレシード・シードの累計投資は約8%ほど増加しました。一方で、プレシード・シードの投資件数はともに最低の水準となっています。2022年4月以降から見られる、投資先の厳選は依然として今後も続くと考えられます。MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

プレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Hypercraft(調達額:650万ドル)

Hypercraftは、ガソリン車をハイブリッド車に変換することを目的とした電気自動車駆動システムを開発する企業です。Hypercraftは、「Genesis」シリーズと「HyperPack」の二種類の製品を提供しています。Genesisシリーズでは、40~120kWhのバッテリー容量と302hp~503hpまでのシングルモーター出力から選べるEVドライブシステムを提供しています。HyperPackシリーズでは、20~120kWhの容量を備えたモジュラーEVバッテリーシステムを提供します。2ドアスポーツカーのトヨタ「GR 86」をレーシングEV化した、全米自動車スポーツ協会によって承認された最初のクラブレーシングEV「SCR1」にHypercraftが開発した800VのEVパワートレインが搭載されています。Hypercraftは、2022 SEMA Launch Padのトップ5にランクインしています。

出典:Hypercraft公式HP

2. Lux Semiconductors(調達額:230万ドル)

Lux Semiconductorsは、フレキシブル半導体パッケージ「System-on-Foil」を開発しています。System-on-Foilでは、新しい設計を取り入れることによって、チップレット(複数の小さなダイ)を高密度かつ高速な相互接続を介して密接に接続させることができ、パッケージ サイズの縮小化が可能になりました。また、独自特許技術によるクロストークがほぼゼロの優れた高周波性能を有し、高密度に実装されたチップから熱を放散する高熱伝導基板が備わっています。チップパッケージの約97%は米国外で生産されていますが、Lux Semiconductorsは米国で生産を行っています。

出典:Lux Semiconductors公式HP

3. MemQ(調達額:200万ドル)

MemQは、シカゴ大学からスピンアウトした、量子メモリを開発している企業です。ソリッドステートプラットフォーム上に構築されたオンチップ量子中継器開発の鍵の一つである、量子ビットの状態を長時間保存する量子メモリに希土類ベースの技術を使用しています。希土類量子ビットは、量子情報を長期間保存可能、光ファイバー通信インフラに対応可能などの利点があります。今回の資金調達で量子中継器のための開発を加速し、量子インターネット実現を目指します。

出典:MemQ公式HP

シリーズA以降の動向

2023年2月のシリーズA以降の投資は、2020年1月以降の投資金額の中では最低の投資金額となり、投資件数も最低の水準が続いています。米国ではさらなる利上げの懸念などにより、市場の影響を受けレイターステージになるほど冷え込んでいます。MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

シリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Our Next Energy(調達額:3憶ドル)

Our Next Energyは電気自動車のための新しい電池システムを開発している企業です。Our Next Energyには、Aries I 、Aries Ⅱ、Gemini、Aries Gridの4製品があります。Aries I は、ニッケルやコバルトを使用せずにリン酸鉄リチウムを用いた、より安全で低コストなクラス3〜クラス6のトラック向けバッテリーです。1回の充電で 150マイルの航続距離を実現します。 Aries Ⅱは、Aries I と同じくリン酸鉄リチウムを用いたバッテリーです。あらゆる乗用車プラットフォームに適合するようにカスタマイズが可能な製品です。Geminiは、電気自動車の航続距離を2倍にするように設計されたプラットフォームです。日常走行用のリン酸鉄リチウムセルと長距離走行用のアノードフリーセル、DC-DCコンバーター、独自特許技術スキップセルアーキテクチャから構成されています。2022年6月には、Our Next EnergyとBMWグループがGeminiをBMW iX 全電動スポーツ アクティビティビークルに組み込む契約を締結しています。Aries Gridは、工場やデータセンター向けのエネルギー貯蔵システムです。従来のエネルギー貯蔵システムのほぼ2倍の耐久性があり、大幅なコスト低減に寄与します。Our Next Energyは、Forbes2023の America's Best Startup Employers Listで3位にランクインしています。

出典:Our Next Energy公式HP

2. R-Zero(調達額:1.05憶ドル)

R-ZeroはUV-Cライト滅菌装置を開発している企業です。UV-Cは微生物の細胞壁を貫通し、遺伝物質の複製を妨害することにより、細菌やウイルス、カビなどの微生物を不活化します。R-Zeroには、Arc、Beam 、Viveの3製品があります。Arcは、手押し移動が可能な部屋全体のための消毒装置です。独自技術の安全機能を搭載した254nmのUV-Cを照射することにより、7分以内に微生物の 99.99% を破壊します。Beam は、世界初のLEDベースの上部室紫外線殺菌照射(UVGI) 装置です。UVGI は、CDC が推奨する265nmの紫外線を使用した空気消毒方法です。部屋の中にいる人の頭上に消毒ゾーンを設け、5分間で浮遊微生物を99.9%不活化します。Viveは、空間の居住者を取り巻く空気と表面を消毒するための天井取り付け型のFar-UVCライトです。特許取得済みのナノフィルター技術により、有害な波長を除去し、人体に安全な 222nm の光のみを透過して微生物の99%を破壊します。また、消毒プロセス全体の可視性のためR-Zero Connect IoT プラットフォームにより、リアルタイムでデータを提供します。

出典:R-Zero公式HP

3. Fulfil Solutions(調達額:6000万ドル)

Fulfil Solutionsはオンライン食料品フルフィルメントのためのロボットシステムを開発する企業です。The Save Mart Companiesと提携してカリフォルニアに開設したフルフィルメント倉庫では、オンライン注文を受けるとFulfil Solutionsのロボットが数分以内に自動でタワー型の棚から食料品を集め、梱包まで行い、完成した注文品をドライバーが回収出来る待合室の場所まで運びます。食料品の損傷を防ぎ、梱包時間を最小限に抑えるため、ロボットには高度なAIやセンサー技術などの仕組みが導入されています。また、食料品が収納されているディスペンスステ―ションのデータベースでは、アイテムの場所や原産地、有効期限まで追跡しています。

出典:Fulfil Solutions公式HP

※産業の区分:What Industries are included in Crunchbase?

ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。

来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。

調査:投資部門インターン藤本

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【米国VC投資額レポート:2023年1月】シード投資は底打ち感、シリーズA以降は引き続き低調

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