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【米国VC投資額レポート: 2023年4月】シード投資件数が急増、Y Combinatorの発表の影響? | Monozukuri Ventures

今回のレポートでは、2023年4月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。 3月のレポートはこちらからご覧ください。

プレシード・シードの動向

2023年4月のプレシード・シードの投資では、プレシード・シードの投資件数はともに急増しました。投資金額で見ると、3月に比べ、プレシードの投資金額は増加したものの、シードの投資金額は減少しました。日ごとの投資動向によると、4月5日に調達件数が急増しています。4月5日に行われた224件中207件の調達がY Combinatorの参加スタートアップへの出資によるものでした。 Y Combinatorは「Y Combinator 2023 Batchで282件の資金を提供した」と4月6日にプレスリリースを出しているため、この関連の影響と思われます。以前はY Combinatorの参加スタートアップへの出資ラウンドは、個別にカウントされていたと思われますが、今回のようにアクセラレーター側からまとめて発表されると、Crunchbaseでは同じ日にまとめて登録されるためです。今後、どのように取り扱うかを決めて、必要に応じて集計方法を変更する可能性があります。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

プレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

日ごとのプレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1.SUN METALON(調達額:200万ドル)

SUN METALONは、超高速・低コストで金属製品を造形できる金属3Dプリンターを開発する企業です。独自技術によって、従来の金属3Dプリント技術と比べ500倍の生産性での製造ができ、レーザー式金属3Dプリント比で1/10のコストで金属部品を製造できます。また、地場の鉱石から金属製品をその場で生み出すような金属部品の地産地消が可能な世界を目指しています。 SUN METALONは弊社代表の牧野が会長を務めるモノづくり起業推進協議会が主催するピッチコンテスト「MONOZUKURI HARDWARE CUP 2022」で優勝しています。

出典:SUN METALON公式HP

2.Sniffer Robotics(調達額:200万ドル)

Sniffer Roboticsは、陸上のメタン漏洩を検出し、排出量を定量化する「Sniffer Drone」を開発している企業です。従来の地表または地表近くのガス排出を測定する方法は、空気収集ノズルを備えた手持ち式閉路検出器を作業者が使用して調査エリアを移動しながら手動で行うことが一般的でした。しかし、従来手法では危険で手間がかかります。そこで、Sniffer Roboticsは、現場技術者が手動で行う作業の多くを自動化する自動化ツールとして設計された無人航空機システム(UAS)であるSniffer Droneを開発しました。

出典:Sniffer Robotics 公式HP

3. Electric Air(調達額:50万ドル)

Electric Airは、最新のヒートポンプ技術と空気品質管理を組み合わせた、HEPAフィルター搭載ヒートポンプシステムを開発する企業です。ヒートポンプは、非常に効率的で家庭用の炉やエアコンに代わる全電気製品です。住宅暖房は米国のエネルギー使用量の10%を占めており、この分野を化石燃料から移行するにはヒートポンプが最適な選択肢です。ヒートポンプを使用すると、住宅所有者は、天然ガス、プロパン、燃料油、電気抵抗による暖房と比較して、月々の光熱費を節約することもできます。しかし、従来のサーモスタットは、ヒートポンプとの互換性が最適ではないという課題があります。Electric Airのヒートポンプは、家全体の冷暖房機能だけでなく、「Electric Air Thermostat」と連携すると空気中のPM2.5とCO2を測定し、濾過と新鮮な空気の取り入れを開始してくれます。また、専用のアプリでは、家の空気の質や光熱費とシステムの電力使用状況の追跡を一目で確認できます。

出典:Electric Air 公式HP

シリーズA以降の動向

2023年4月のシリーズA以降の投資は、2023年1月並みの投資金額となり、投資件数は3月より減少しています。3月は大型調達の影響により投資金額が増加したことを先月のレポートで報告しました。4月は3月ほどの大型調達はなかったため、投資金額は減少しています。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

シリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Zipline(調達額:3.3憶ドル)

Ziplineは、ドローンの開発・製造と物流サービスを提供している企業です。Ziplineのドローンは、食べ物から薬、検査サンプルまであらゆる物の配達に対応しており、時速100km以上で、一回の飛行距離が100マイル以上に達します。ルワンダ、ガーナ、米国など世界中で事業を展開しています。 2018年6月シリーズCで豊田通商株式会社がZiplineと出資・業務提携を締結しています。豊田通商株式会社のプレスリリースによると、ガーナでの協業では、豊田通商グループの医薬品輸入卸販売事業会社であるGokals-Laborex Limitedが取り扱う医薬品をZiplineがガーナの医療機関に配送しています。また、豊田通商株式会社のグループ会社「そらいいな株式会社」では、2022年以降、Ziplineとの協業により長崎県五島列島で医療用医薬品のドローン配送事業を開始しています。

出典:Zipline 公式HP

2. Edge Q(調達額:7500万ドル)

Edge Qは、「Base Station-on-a-Chip」を開発し、通信事業者・クラウドサービスプロバイダーおよび企業にシンプルかつスケーラブルで手頃な価格のパブリックおよびプライベートネットワークを構築・展開する機能を提供する企業です。S Seriesでは、4G、5G、AIを単一チップに大規模に統合する世界初のSoftware-definedプラットフォームを提供します。M Seriesでは、オープンRANアプリケーション向けの世界初の4G、5G、AIアクセラレーションカードを統合したものを提供します。

出典:Edge Q 公式HP

3. Covariant(調達額:7500万ドル)

Covariantは、カリフォルニア大学バークレー校の教授Pieter Abbeel氏が共同創業した、倉庫向けのAIロボットシステムを開発する企業です。CovariantのAIプラットフォーム「Covariant Brain」を活用して、Covariantは、ロボットによるピッキング・配置・仕分けソリューションなど幅広い倉庫業務での倉庫の自動化を促進しています。また、CovariantのパートナーであるOtto Groupは、Otto Groupのフルフィルメントセンターで注文ピッキングプロセスを処理するためにCovariantのロボットを100台以上導入する予定です。

出典:Covariant 公式HP

※産業の区分:What Industries are included in Crunchbase?

ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。

来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。

調査:投資部門インターン藤本

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【【米国VC投資額レポート: 2023年3月】シード投資は横ばい、シリーズA以降は底打ち感

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【米国VC投資額レポート: 2023年5月】シードおよびシリーズA以降の投資件数はともに減少

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