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【米国VC投資額レポート: 2023年5月】シードおよびシリーズA以降の投資件数はともに減少| Monozukuri Ventures

今回のレポートでは、2023年5月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。4月のレポートはこちらからご覧ください。 なお今回から、事業会社からの出資を反映させた集計方法に変更し、各ラウンドにおける投資動向のグラフを変更しています。

プレシード・シードの動向

2023年5月のプレシード・シードの投資では、プレシード・シードの投資件数はともに2020年以降で過去最低となりました。投資金額で見ると、シードの投資金額は増加したものの、プレシードの投資金額は今年の2月並みになっています。投資件数に関して増減が激しくなっているので、今後の動向に注意が必要です。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

プレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Etched AI(調達額:536万ドル)

Etched AIは、ハーバード大学を中退した2人によって設立された、言語モデル推論に特化したチップを開発している会社です。1種類のモデルのみをサポートすることで、GPUのパフォーマンスを1ドルあたり100倍以上にできるとのことです。今回のシードラウンドでは、Primary Venture Partners主導のもとEbay社の元CEOであるDevin Wenig氏を含むエンジェル投資家が出資しました。

出典:Etched AI 公式HP

※1 写真出典:wsj.com

2. Power X(調達額:400万ドル)

Power Xは、水と電気の使用状況を把握するためのハードウェアとソフトウェアを開発している会社です。センサーは、設置時に穴を開けたりパイプを切断したりしなくても良いように設計されており、非侵襲で簡単に1時間以内で取り付け・取り外しができます。利用者は、スマートフォンにアプリを入れることにより使用状況を管理することが出来ます。 また機械学習によって、どのデバイスが無駄かを判断できるので、光熱費などを節約することが可能です。

出典:Power X 公式HP

3. Freespace Robotics(調達額:25万ドル)

Freespace Roboticsは、次世代の倉庫自動化システムを開発している会社です。製品の詳細等はまだ公表されていませんが、ロボットを用いた自動化により運用コストと人件費が75%削減でき、現在の主要なAS/RSソリューションの2倍の速度で複数の荷物を一度に扱えるソリューションのようです。 また、競合他社が設置できない場所にも設置可能で平坦ではない地面でも機能するそうです。2023年第4四半期に公表予定なので今後の動向に注目です。

出典:Freespace Robotics 公式HP

シリーズA以降の動向

2023年5月のシリーズA以降の投資では、投資件数は3月以降引き続き減少しています。投資金額は、底が見えない状況で、スタートアップの資金調達環境の低迷が続いています。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

シリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Lightmatter(調達額:1.54憶ドル)

Lightmatterは、フォトニクスAIコンピューティングプラットフォームを開発する会社です。 生成AIを強化する大規模言語モデルのサイズには能力とコストの限界があると言われています。フォトニクス対応製品であるEnvise、Passage、およびIdiomを市場に投入することで、フォトニクスコンピューティングおよび相互接続テクノロジーの利点を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアソリューションのフルスタックを提供し、人工知能コンピューティングの急速な成長の継続を可能にします。Lightmatterのチップは、データの記録や操作に電荷やトランジスタを使用する代わりに、光の経路を操作して計算を実行するフォトニクス回路を使用します。また、Lightmatterは世界中で150を超える特許を取得しています。

出典:Lightmatter 公式HP

2.Forge Nano(調達額:5000万ドル)

Forge Nanoは、独自のナノコーティング技術である「Atomic Armor」を使用して材料工学を変革する材料科学企業です。Forge Nano独自の原子層堆積(ALD)テクノロジーである「Atomic Armor」は、原子レベルのエンジニアリングとナノスケールの表面強化を可能にし、材料の性能を原子レベルで解き放ち、より優れた材料を構築します。Forge Nanoの技術は、バッテリーや半導体、積層造形、触媒、医薬品分野で使用されています。日本国内でも粒子専用の原子層堆積(Atomic Layer Deposition)装置などが代理店によって販売されています。

出典:Forge Nano 公式HP

3.MayMaan Research(調達額:3000万ドル)

MayMaan Researchは、水70%とエタノール30%で構成されるクリーンな再生可能燃料を利用する内燃エンジンを開発している会社です。 MayMaan Researchの技術は、自動車、発電機、充電ステーション、機関車、さらには貨物船など、あらゆるサイズのエンジンで使用できます。「AquaStroke」発電機シリーズでは、20kW、40kW、150kWモデルが用意されています。また、急速充電器に電気を供給可能な充電ステーション設置型の35kWおよび120kW発電機も提供しています。また、自動車にMayMaan Researchのエンジンを使用すると環境への影響を最小限に抑えながら高いパフォーマンスとスピードを発揮できます。

出典:MayMaan Research 公式HP

※産業の区分:What Industries are included in Crunchbase?

ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。

来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。

調査:投資部門インターン藤本

🔳前月レポートはこちら

【米国VC投資額レポート: 2023年4月】シード投資件数が急増、Y Combinatorの発表の影響?

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【米国VC投資額レポート: 2023年6月】シードおよびシリーズA以降の投資金額は最低水準を推移。シードの投資件数の減少が止まらず

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