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【米国VC投資動向レポート: 2023年9月】アーリーステージ、レイターステージともに投資件数および投資金額で回復のきざし | Monozukuri Ventures
今回のMonozukuri Ventures(以下「MZV」)レポートでは、2023年9月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。 8月のレポートはこちらをご覧ください。 ※2023年5月以降、事業会社からの出資を反映させた集計方法に変更し、各ラウンドにおける投資動向のグラフを変更しています。なお、投資動向のグラフはハードウェア企業・ソフトウェア企業に関係なく米国全体の動向を示しています。
プレシード・シードの動向
2023年9月のプレシード・シードの投資では、投資件数は先月に比べ大幅な回復傾向にあり、投資金額は約1年前の数値まで回復しています。日別の投資動向を確認すると、25日にバイオテクノロジー企業であるNvelop Therapeutics社がNewpath Managementをリード投資家として1億ドルの調達を行っていました。
MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。米国全体のプレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)
出典:Crunchbaseデータベース
日ごとのシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)
出典:Crunchbaseデータベース
1.Sonera Magnetics(調達額:1100万ドル)
Sonera Magneticsは、心拍数を測定するときと同じように簡単に脳の活動を検出できるセンサーを構築するため、神経活動を非侵襲的に検出できる高性能磁気センサーを開発している会社です。神経活動は電流と磁場の両方を同時に生成していますが、Sonera Magneticsは皮膚に直接接触せずに測定できる磁場の記録に焦点を当てています。チップにパッケージ化できる半導体ベースの技術を使用して生体磁気センシングに取り組んでいます。
2.Rain Industries(調達額:970万ドル)
Rain Industriesは、自律型航空機用の山火事鎮火システムを開発している会社です。 2021 年には世界のCO2総排出量の18%が山火事によって排出されており、近年の米国では大規模な山火事が増加しています。これらの課題を解決すべく、Rain Industriesは、既存の山火事探知システムと連携して、発火が検出されると数秒以内に Rain 搭載航空機を遠隔から出動させ、数分以内に火災発生現場に到着させます。その後、独自テクノロジーが火の挙動や大きさ、広がり方向などの情報から鎮火戦略を設計し、難燃剤の散布を展開します。また、後続の応答航空機を考慮した戦略に基づき、後続航空機の手配と到着時間の最適化に同時対応します。
3.NORI(調達額:470万ドル)
NORIは、アイロン台がいらないスチーム機能付きアイロン「Nori Press」、毛玉や糸くずを除去するファブリックシェーバー「Nori Trim」などを開発している会社です。Nori Pressは、衣服の表と裏を同時にアイロンをかける 2 つの加熱プレート付きで特許取得済みのデザインを使用しています。また、持ち運びにも便利な製品となっています。Nori Trimは、セーター、毛布、カーテンだけでなく、カシミアのスカーフやシルクのブラウスなどのデリケートなアイテムも簡単に掃除が可能な製品です。NORIは、アイロン業界のゲームチェンジャーとなるべく活動されています。
出典:NORI 公式HP
シリーズA以降の動向
2023年9月のシリーズA以降の投資では、投資件数は未だ低水準を推移していますが、投資金額は先月に続き回復傾向にあります。日別の投資動向を確認すると、25日に元OpenAIメンバーが創業したAIスタートアップANTHROPIC社がamazonから12.5億ドルの大型調達を行っていました。ANTHROPIC社は、Google LLC を含む投資家と追加で更なる資金調達に向けて協議を行っていると言われています※1。 2023年春頃は、さらなる利上げの懸念などによる市場の影響でレイターステージでは冷え込みが見られていました。しかし、先月に続きレイターステージでの投資金額が回復し始めており、レイターステージでの資金調達環境の回復が始まる兆候となり得るのか今後の動向に注目です。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。
米国全体のシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)
出典:Crunchbaseデータベース
日ごとのシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)
出典:Crunchbaseデータベース
1. Ambient Photonics(調達額:3000万ドル)
Ambient Photonicsは、スマートホームや家庭用電化製品、IoT デバイス向けの低照度環境発電型PVセルを開発している会社です。長年使用されてきたアモルファスシリコンセルなど従来の太陽光発電技術では、屋内用電子機器など現実世界の低照度動作条件下では十分に電力を生成できないという課題があります。また、ガリウムヒ素電池のような高性能低照度太陽電池技術は法外な価格が設定されているため、宇宙衛星や研究用途にのみにしか使用できないという課題があります。これらの課題に対し、Ambient PhotonicsのPVセルは、従来の屋内アモルファスシリコン太陽電池と比較して最大3倍の出力密度を実現しているにも関わらず、大量製造が可能で低コストな製品となっています。
2.BOXBOT(調達額:1200万ドル)
BOXBOTは、小包物流に革命をもたらす自動仕分けおよび保管ソリューションを開発している会社です。BOXBOTの3次元コンベヤシステムは、大幅に小さい設置面積内で保管密度を高めながらサイズに依存しない高スループットのペイロードを実現し、並べ替えなどが可能です。また、新規または既存施設の両方に簡単に設置できるシステムとなっています。 今回のラウンドには既存投資家であるToyota Venturesも参加しています。
出典:BOXBOT 公式HP
3.ASPINITY(調達額:500万ドル)
ASPINITYは、システム電力を最小限に抑えるアナログ機械学習チップを開発する会社です。常時オンのシステム電力を 95% 以上削減を可能にしたエッジ処理ソリューション「AML100」は、独自特許取得済みのanalogML™ テクノロジーにより、必要なデータが検出されるまでMCUおよびその他のデジタルプロセッサをスリープ状態に保ち、本当に重要な情報のみにデバイスの電力を集中させ、常時稼働のAI システム電力を最小限に抑えます。
今回のラウンドには自動車半導体代理店の韓国Unitrontechも加わり、車載向けソリューションの開発を加速させます。What Industries are included in Crunchbase?
※産業の区分:ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。
※1 ”Anthropic seeks huge investment from Google just days after Amazon invested billions”
来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。
調査:投資部門アソシエイト藤本真由
🔳前月レポートはこちら
【米国VC投資動向レポート: 2023年8月】シードおよびシリーズAの投資件数・投資金額ともに最低水準だが、シリーズB以降は大型調達が出始める
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