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【米国VC投資動向レポート: 2023年10月】米国のベンチャー投資は、2023年夏で底を打った模様。ただし調達額は小型化傾向に | Monozukuri Ventures

今回のMonozukuri Ventures(以下「MZV」)レポートでは、2023年10月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。 9月のレポートはこちらをご覧ください。 ※2023年5月以降、事業会社からの出資を反映させた集計方法に変更し、各ラウンドにおける投資動向のグラフを変更しています。なお、投資動向のグラフはハードウェア企業・ソフトウェア企業に関係なく米国全体の動向を示しています。

プレシード・シードの動向

2023年10月のプレシード・シードの投資では、前月に比べて投資件数は微減、投資金額は減少しています。これは9月にシードでの資金調達ではかなり大型の調達があった影響です(Nvelop Therapeutics社が1億ドルを調達)。投資金額は前年比でも約23%減ですが、緩やかな回復傾向を見せており、プレシードおよびシード投資の減少傾向は2023年夏に底を打ったと言えそうです。 米連邦準備理事会(FRB)は夏以降は利上げを見送っており、2024年には利下げを始めると見られています。2024年はプレシードやシード期のスタートアップに資金が戻ってきそうです。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

米国全体のプレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Bonsai Robotics(調達額:1050万ドル)

Bonsai Roboticsは、農業機械などのオフロード車両向けのビジョンベースの自動化ソリューションを提供している会社です。Bonsai Robotics ソリューションは OEM 農機具と統合されており、車両が人間のオペレーターなしで果樹園を自律的に移動できるようになります。Bonsai Robotics ソフトウェアは、数万エーカーのデータセットを使用して構築された AI SLAMテクノロジーを活用しているため、ほこり、破片、激しい振動、信頼性の低い GPS カバー範囲のある遠隔地などの悪条件でも動作できます。

出典:Bonsai Robotics 公式HP

2. Faction(調達額:600万ドル)

Factionは、無人電気自動車用のソフトウェアとサービスを開発している会社です。Factionの監視付き自動運転車ソリューションには、人間による遠隔監視 TeleAssist® が含まれているため、100% 自動運転技術の実現を待ち続ける必要はありません。FactionのFaction Delivery Portal と API は、配信業務にシームレスに統合され、従来の配送フリートに代わるコスト効率の高い代替手段となります。

出典:Faction公式HP

3.Quoherent(調達額:470万ドル)

Quoherentは、室温でシームレスに動作するトポロジカル材料を利用した室温エッジ対応量子プロセッサの開発などをしている会社です。Quoherentによる、画期的な進歩により、極端な冷却対策の必要性がなくなるだけでなく、量子コンピューティングが前例のないアクセス性が得られるようになります。このラウンドは Morpheus Ventures が主導し、Draper Associates、Khosla Ventures、Alpha Edison が参加しました。

出典:Quoherent 公式HP

シリーズA以降の動向

2023年10月のシリーズA以降の投資では、投資件数に増加傾向が見られており、プレシード・シード投資と同様に、夏を底にベンチャー投資が回復傾向にあるようです。シリーズA以降の投資件数は2023年初めの数値まで回復しています。 ただし金額ベースで見ると、シリーズAの投資金額は増加したものの、シリーズB以降の投資金額は先月よりも減少しました。以前のような大型ラウンドが鳴りを潜めている現状を反映しているようです。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

米国全体のシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Seurat Technologies(調達額:9900万ドル)

Seurat Technologiesは、脱炭素工業生産向けに設計された次世代の 3D 金属プリンティング技術を開発している会社です。3D プリンティングは、材料の無駄を減らし、軽量の部品を作成できるため、環境に優しい製造方法とみなされてきました。大量の部品生産を金属鋳造からエリア印刷に移行することで脱炭素化に貢献します。Seurat TechnologiesのArea Printingでは、230 万以上のピクセルを含む強力なレーザー (ブラシ ストロークのようなもの) を使用して、薄い金属粉末層をその下の領域に微細溶接し、単一の定義された領域でレンダリング全体を一度に製造します。

出典:Seurat Technologies 公式HP

2.Mojo Vision(調達額:4350万ドル)

Mojo Visionは、世界最小かつ最も密度の高い高性能マイクロLEDディスプレイ技術の開発をしている会社です。マイクロ LED は、新興 AR/VR 市場のすべての要件を満たすことができる唯一のディスプレイ テクノロジーです。Mojo Vision は、初のARスマートコンタクトレンズ用に世界最小で密度の高いダイナミック ディスプレイを開発し、現在このイノベーションと専門知識を応用して、1,600 億ドル規模のディスプレイ業界の破壊をリードしています。

出典:MojoVision 公式HP

3.JETCOOL Technologies(調達額:1700万ドル)

JETCOOL Technologiesは、高出力エレクトロニクス用のコンパクトな冷却ソリューションを開発する会社です。内蔵型液体冷却システムは、空冷サーバーの隣に簡単に導入できるように設計されており、データセンターの密度を最大限に高めることができます。JetCool の特許取得済みの微小対流液体冷却は、表面上に流体を通す一般的なヒートシンクや従来のコールドプレートとは異なり、当社の冷却ジェットは流体を表面に直接送り、熱伝達を桁違いに改善します。

出典:JETCOOL Technologies 公式HP

※産業の区分:What Industries are included in Crunchbase?

ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。

来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。

調査:投資部門アソシエイト藤本真由

🔳前月レポートはこちら

【米国VC投資動向レポート:2023年9月】アーリーステージ、レイターステージともに投資件数および投資金額で回復のきざし

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