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【米国VC投資動向レポート: 2024年5月】投資額は増加したものの件数は下落 | Monozukuri Ventures
今回のMonozukuri Ventures(以下「MZV」)レポートでは、2024年5月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。 2024年4月のレポートはこちらをご覧ください。 2023年5月以降、事業会社からの出資を反映させた集計方法に変更し、各ラウンドにおける投資動向のグラフを変更しています。なお、投資動向のグラフはハードウェア企業・ソフトウェア企業に関係なく米国全体の動向を示しています。
プレシード・シードの動向
2024年5月のプレシード・シード投資では、投資額は先月より増加しましたが、投資件数は減少しました。日ごとの投資動向を見ると、13日に投資額が増加しています。これは、ゼネラル・モーターズ(GM)の自動運転技術開発子会社、GMクルーズの創業者で元CEOであるカイル・ヴォクト氏が立ち上げた家庭用ロボット製造スタートアップThe Bot Companyがシードラウンドで1億5000万ドルの資金調達を行ったためです。
MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。米国全体のプレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)
出典:Crunchbaseデータベース
日ごとの米国全体のプレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)
出典:Crunchbaseデータベース
1.Neros Technologies (調達額:1090万ドル)
Neros Technologiesは、自律型ドローンの製造と無人防衛システムの開発を行っています。今日、紛争において自律型防衛システムが求められており、特にドローンは多く用いられています。この課題に対応するため、Neros Technologiesはドローンを使用した世界最先端かつ大規模の無人防衛システムの構築を目指しています。
2.Lumo(調達額:700万ドル)
Lumoは、スマート灌漑(かんがい:耕地に人工的・組織的に給水すること)システムを開発しており、生産者の節水、作物の品質向上とコスト削減の実現を目指しています。下図は作物への水の供給量を正確に制御し、測定することができるThe Lumo One Smart Valveです。こちらのバルブはインターネット接続されているため遠隔操作が可能かつ、繊維強化プラスチック製で頑丈などの特長があります。
出典:Lumo 公式HP
3.Vitro3D(調達額:385万ドル)
Vitro3Dは、3次元細胞培養や歯科用アライナー型矯正装置などの迅速な製造を可能にするボリューメトリック積層造形(VAM)と呼ばれる3Dプリンティング・ソリューションを開発しています。同社が開発するVAM技術には、比類のないスピード、高精度かつ高品質、設計の柔軟性、化学薬品の不使用などの優れた特長があります。
出典:Vitro3D 公式HP
シリーズA以降の動向
2024年5月のシリーズA以降の投資では、シリーズB以降の投資額が先月に比べて増加しました。シリーズB以降の投資額が増加した要因としては、26日にイーロン・マスク氏が率いる人工知能(AI)企業のxAIがシリーズBラウンドで60億ドルを資金調達したことが挙げられます。投資件数に関しては、先月に比べシリーズA・シリーズB以降ともに減少していました。
MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。米国全体のシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)
出典:Crunchbaseデータベース
日ごとの米国全体のシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)
出典:Crunchbaseデータベース
1.Frore Systems(調達額:8000万ドル)
Flore Systems は、コンシューマー機器向けの放熱技術を開発する企業です。同社の半導体冷却チップである AirJetは、機器に組み込むことで静音で動作しながら排熱を行い、デバイスの大幅な性能向上を実現します。サイズもコンパクトであり、より薄く、より軽く、振動のない、防塵・防水デバイスの設計と製造を可能にします。AirJetはPCやカメラ、SSDなどに加え、将来的にビデオディスプレイやクラウドストレージ、ドローンや自動車の性能向上に寄与すると期待されています。
2.World View Enterprises(調達額:2500万ドル)
World View Enterprisesは、成層圏からのリモートセンシングと宇宙旅行を提供する会社です。同社は、成層圏での軌道制御方法と離着陸システムを開発し、これまで成層圏での飛行に115回以上、成功しています。当社の成層圏気球は、衛星よりも5倍地球に近い距離を飛行でき、農業から海洋などに関する詳細な画像データの収集が可能です。また、離陸から成層圏飛行ができる宇宙旅行を提供しています。離陸から着陸まで、5〜8 時間の飛行で1席あたり5万ドルで、世界7箇所の宇宙港のいずれかから旅をすることができます。
出典:World View Enterprises 公式HP
3.Aerodome(調達額:2150万ドル)
Aerodomeは、緊急事態や災害発生時にドローンを迅速に現場へ派遣し、初期対応を行うためのシステムDrone-As-First-Responder(DFR)を開発している会社です。完全自動化、完全遠隔操作、完全統合されたドローンシステムを使用し、公共安全機関に自動化された遠隔航空支援オペレーションシステムを提供します。同社は24時間365日DFRソリューションを提供することで、パトロール警官が通報に対応する必要性を低減します。
What Industries are included in Crunchbase?
※産業の区分:ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。
来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。
調査:投資部門インターン 野原多朗 / アソシエイト 藤本真由
■前月レポートはこちら
【米国VC投資動向レポート: 2024年4月】アーリーステージ、レイターステージともに投資件数が増加傾向
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