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【米国VC投資動向レポート: 2024年7月】投資金額は回復基調だが、投資件数は引き続き低水準 | Monozukuri Ventures

今回のMonozukuri Ventures(以下「MZV」)レポートでは、2024年7月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。 2024年6月のレポートはこちらをご覧ください。 2023年5月以降、事業会社からの出資を反映させた集計方法に変更し、各ラウンドにおける投資動向のグラフを変更しています。なお、投資動向のグラフはハードウェア企業・ソフトウェア企業に関係なく米国全体の動向を示しています。

プレシード・シードの動向

2024年7月のプレシード・シード投資では、先月より投資額はわずかに減少し、投資件数は平常どおりでした。プレシードの投資件数は、引き続きこの4年間で最低水準です。2020年や2021年のときの投資額より現在の投資額が増加しているにもかかわらず、投資件数が最低水準な理由として、生成AI系で大型のシード投資が続いているためと考えられます。日ごとの投資動向を見ると、2日に投資額が増加しています。これは、オープンソースの分散型AIプラットフォームの開発を目指すSentientがシードラウンドで8500万ドルの資金調達を行ったためです。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

米国全体のプレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

日ごとの米国全体のプレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1.SirenOpt (調達額:660万ドル)

SirenOptは、低温大気圧プラズマを使用した非破壊検査装置を開発している会社です。同社の非破壊検査装置では、他の方法では入手できない製造データを収集することができ、そのデータを用いて製造プロセスのばらつきをリアルタイムで測定することが可能です。具体的には、ナノスケールレベルの材料厚さ、密度、伝導率、化学組成、電気化学データを取得できます。同社のソリューションは、バッテリー、航空宇宙、半導体、電子機器、その他の先進製造業において、産業効率を向上させることが期待されています。

出典:SirenOpt 公式HP

2.Solideon(調達額:500万ドル)

Solideonは、人工知能、ロボット工学、金属積層造形技術を活用して、航空宇宙用部品の製造を行う会社です。同社は、独自のワイヤアーク積層造形技術を駆使し、材料の無駄とエネルギー消費を最小限に抑えながら、複雑な部品を迅速に製造できる点が特徴です。また、同社の積層造形技術は最大15kg/時間の堆積を目標とした、最大で高さ2.5m x 直径4m の造形能力を誇ります。さらに、部品設計には機械学習アルゴリズムを取り入れ、設計プロセスの高速化と製造の自動化を実現しています。

出典:Solideon 公式HP

3.Hextronics (調達額:200万ドル)

Hextronicsは、最先端のドローンドッキング技術とバッテリー交換技術を持つ会社で、大型ドローン用の格納庫「ATLAS」と小型ドローン用の格納庫「UNIVERSAL」を開発しています。同社のドローン格納庫は迅速な自動バッテリー交換機能を特徴としており、ATLASでは2分未満でバッテリーを交換することができ、ドローンが大きな遅延なく空に戻ることができます。また、ATLASには最大 8 個のバッテリーを保管できます。これにより同社製のドローン格納庫は、ドローンの空中滞在時間を延ばすことを可能にし、農業、建設、エネルギー業界などにおける点検効率の向上に大きく貢献しています。

出典:Hextronics 公式HP

シリーズA以降の動向

2024年7月のシリーズA以降の投資では、シリーズB以降の投資額が先月に比べて増加しました。投資件数に関しては、シリーズAとシリーズB以降ともに先月に比べ増加していました。日ごとの投資動向を見ると、23日に投資額が大幅に増加しています。これは、自動運転車開発企業であるWaymoがAlphabetから50億ドルの資金調達を実施したためです。同社は自律走行車の技術を開発し、交通の安全性と効率性の向上を目指しており、本調達は自律走行技術の開発等へ充てられる予定です。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

米国全体のシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

日ごとの米国全体のシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1.Astranis(調達額:2億ドル)

Astranisは、静止軌道用の次世代宇宙船を開発する会社です。同社の各宇宙船は、独自のソフトウェア定義無線(Software-Defined Radio, SDR)ペイロードを搭載し、重量400kgを実現しています。これにより静止軌道(Geostationary Earth Orbit, GEO)での運用を可能にし、中小規模の国々や米国企業、米国政府などに専用衛星を提供しています。Astranisはすでに衛星の打ち上げに成功しており、フィリピン初の通信衛星などを軌道に投入しています。Astranisは2030 年までに100基のMicroGEO衛星を打ち上げ、数百万人に手頃な価格でインターネットを提供することを目標としています。

出典:Astranis 公式HP

2.Halo Industries(調達額:8000万ドル)

Halo Industriesは、独自のレーザー技術を活用した加工技術により、シリコンカーバイド(SiC)ウェハで業界最高水準の歩留まりを実現しています。従来のウェハ製造方法で発生する残留応力や表面欠陥を排除し、他に類を見ない品質を実現しています。さらに、シリコンカーバイドに加えて、シリコン、サファイア、ダイヤモンド、その他の材料に対しても、レーザーを用いたウェハ製造および加工技術を開発しています。これにより、当社の加工技術はSiCウェハの歩留まりと品質を大幅に向上させ、電気自動車(EV)、EV充電ステーション、電気鉄道・交通、航空宇宙・防衛など、多様な下流アプリケーションでの成長機会を加速させています。

出典:Halo Industries 公式HP

3.unspun(調達額:3200万ドル)

unspunは、糸を直接衣服に織り込む3D技術「Vega™」を開発する会社です。Vega™は高速で織り上げることができ、衣服を迅速かつ効率的に生産可能です。Vega™マシンは、生産リードタイムを従来の数か月から数日へと大幅に短縮します。このスピードにより、自動化、ローカライズ、大規模な生産が実現可能になります。さらにVega™は、従来の裁断と縫製のプロセスの全工程を省略することで、織物アパレルのオンショアおよびオンデマンド生産というまったく新しい世界への扉を開きます。同社の使命は、世界の炭素排出量を1%削減することです。

出典:unspun 公式HP

※産業の区分:What Industries are included in Crunchbase?

ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。

来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。

調査:投資部門インターン 野原多朗 / アソシエイト 藤本真由

■前月レポートはこちら

【米国VC投資動向レポート: 2024年6月】シードの投資件数は引き続き低水準

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