post

【米国VC投資額レポート: 2023年3月】シード投資は横ばい、シリーズA以降は底打ち感 | Monozukuri Ventures

今回のレポートでは、2023年3月のプレシード・シードとシリーズA以降、それぞれの投資動向と注目企業を紹介します。 2月のレポートはこちらからご覧ください。

プレシード・シードの動向

2023年3月のプレシード・シードの投資は、1月以降大きな変動はありませんが、2月と比較するとシードの投資金額は減少し、プレシードの投資金額は増加しました。プレシード・シードの投資件数はともに1月以降横ばいとなっています。3月にはSilicon Valley Bankの破綻などがありましたが、日ごとの投資動向を確認してもSilicon Valley Bankの破綻が起きた直後付近に大きな変動はなく、投資に関する影響は少なかったものと見られます。 MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

プレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

日ごとのプレシード・シードの投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1.Wilderness Labs(調達額:330万ドル)

Wilderness Labは、「.NET(様々な種類のアプリケーションを構築するためにMicrosoft社が作成したオープンソースのプラットフォーム)」の開発者に向けた組み込みハードウェアスペースを開放するためのIoTプラットフォームシステムを開発する企業です。Webやモバイルアプリケーションの開発と同じくらい迅速かつ簡単にハードウェア開発を行うことを目標にしています。Wilderness Lab の主力製品の一つであるMeadowは、NuttX上に構築されています。NuttXは、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、組み込み業界で30年以上働くエンジニアであるGregory Nutt氏が作った、組み込みマイクロリアルタイムオペレーティングシステム(µRTOS)です。2022年5月には、GitHubのCEOであるThomas Dohke氏がWilderness Labsの理事長に任命されています。

出典:Wilderness Lab公式HP

2. Drone Express(調達額:25万ドル)

Drone Expressは、空中自律型ドローンを使用して地域の荷物を配送する企業です。Telegrid Technologiesの一部門として2021年に設立されました。Drone Expressは、多重量対応のドローンではなく、Azure Machine Learningを使用して、ドローンが遭遇する可能性のある障害物やシナリオの写真を提供して安全な配送エリアを特定するように学習させることにより、インテリジェントな航空機の構築を目指しています。最大5ポンドの配送が可能で、複数のドローンを送って大量の注文に対応します。航空管制が厳しいドローン業界ですが、Drone ExpressがPart 135認定に向けて順調に進んでいることから、FAAはAzureを利用したソリューションに前向きな反応を示しています。

出典:Drone Express 公式HP

3. Impact Biosystems(調達額:10万ドル)

Impact Biosystemsは、筋肉の緊張を測定するハンドヘルドスキャナーを開発する企業です。筋肉スキャナー「Pact Sense 」で筋肉の硬さと緊張を5秒以内にスキャンして筋肉の状態を評価し、モバイルアプリ「Pact」でスキャン結果に基づいてパーソナライズされた回復コンテンツを生成して特定の筋肉の緊張を和らげることをサポートしてくれます。Android のサポートは2023年第4四半期に予定されています。

出典:Impact Biosystems 公式HP

シリーズA以降の動向

2023年3月のシリーズA以降の投資は、2月に比べて2倍以上の投資金額となり、投資件数も増加しています。投資金額が倍以上になった要因の一つとして、3月15日にシリーズIで65億ドル調達したStripeによる影響が考えられます。Stripeの資金調達を除いた2023年3月のシリーズA以降の投資でも、投資金額・投資件数ともに2月から増加しています。 シリーズEで3月17日に5億ドル調達したRipplingやシリーズBで3月14日に3.5億ドル調達したAdapt AIなどがStripeに次ぐ大型資金調達を行っていました。2023年3月における日ごとの投資動向を確認すると、Silicon Valley Bankの破綻などがありましたが、プレシード・シードの投資動向と同じく、日ごとの投資動向に大きな変動は少ないため、バイデン大統領による早急な演説や預金の全額保護などの迅速な対応により、米国スタートアップ全体を揺るがすほどの影響は少なかったものと見られます。(RipplingなどはSilicon Valley Bankの破綻の騒動が資金調達のきっかけとなったようです。) MZVの投資領域であるハードウェア領域の注目企業は以下のとおりです。

シリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

Stripe,Inc.を除いたシリーズA以降の投資動向 (棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

日ごとのシリーズA以降の投資動向(棒グラフ:投資額、折れ線グラフ:投資件数)

出典:Crunchbaseデータベース

1. Humane(調達額:1憶ドル)

Humaneは2018年に創業したサンフランシスコに拠点があるステルス企業です。今日に至るまで1製品もリリースしていませんが、AI時代のデバイスとサービスプラットフォームの構築を目標にしています。創業者はImran Chaudhri氏とBethany Bongiorno氏の夫妻です。Imran Chaudhri氏は、Appleに20年以上勤務し、Macintosh、iPod、iPad、Apple Watch、iPhoneなどのデザインに関わり、多くの特許を取得しています。Bethany Bongiorno氏も同じくApple出身で、ソフトウェアエンジニアリングのディレクターとして、iOSとmacOSのすべてのソフトウェア プロジェクト管理を担当していました。 今回のシリーズCのラウンドは、Kindred Venturesが主導し、既存の投資家であるTiger Global、Valia Ventures、Qualcomm Ventures、Forerunner Ventures、Lachy Groom、および OpenAIの創設者であるSam Altmanが参加しました。また、このラウンドには、Hico Capital、Microsoft、Volvo Cars Tech Fund、LG Technology Ventures、Top Tier Capital、Hudson Bay Capital、Socium Ventures などの新しい戦略的投資家やパートナーも参加しました。NewsPicksの児玉氏の記事では、Humaneの製品に関するいくつかのヒントが掲載されており、記事によると「2022年に9to5googleが報じたところによれば、同社はレーザープロジェクターを用いて、手や目の前の自動車のエンジンやテーブルなどに情報をプロジェクションするUIの特許を出願している※1」そうです。

出典:Humane公式HP

2. Nimble Robotics(調達額:6,500万ドル)

Nimble Roboticsは、ロボット工学を利用したサードパーティのロジスティクスフルフィルメントネットワークを構築する企業です。倉庫業務を完全に自動化するためのリソースを持たない全米のeコマース企業などにサービスを提供することを目的としています。倉庫自動化の最も難しい部分であるアイテムピッキングの課題解決に取り組んでいます。Nimble Roboticsのロボットフルフィルメントシステムを利用すると、自社の倉庫を構築せずとも、完全に自動化されたサードパーティー・ロジスティクスセンターに倉庫のニーズを効果的にアウトソーシングでき、倉庫のサイズを75%も削減しながら電子商取引の注文を自律的にピッキング・梱包・出荷できます。PUMAやVictoria’s Secret、iHerbなどもNimble Roboticsのシステムを活用しています。

出典:Nimble Robotics 公式HP

3. Plus One Robotics(調達額:5,000万ドル)

Plus One Roboticsは、小包のピッキングと配置に必要な認識・操作を提供する独自のエンドオブアームロボットグリッパーとAI搭載ソフトウエアを組み込んだ小包ピッキングロボットシステム「PickOne Depalletizing System」を開発する企業です。倉庫の80%以上が手作業であるため、出荷に対する需要の増加が予想され、継続的な労働力不足が課題となっています。Plus One Robotics のロボットを使用すると1日あたり100万件を超える小包ピッキングが実行できます。現在、Plus One Roboticsのロボットを活用した小包ピッキングが世界中で1日5億件以上稼働しています。Plus One Roboticsは、物流大手のFedExやDHLなどの世界的大手をクライアントとして契約しています。

出典:Plus One Robotics 公式HP

※産業の区分:What Industries are included in Crunchbase?

ハードウェアとの関連が見られない企業が含まれていることがありますが、Crunchbase の分類に従い集計しています。

※1 NewsPicks「Humane - AI時代のコンピューターのカタチとは」

来月以降も米国のVC投資動向を公開予定です。

調査:投資部門インターン藤本

🔳前月レポートはこちら

【米国VC投資額レポート: 2023年2月】シード投資は回復基調、シリーズA以降は引き続き減少傾向

Monozukuri Venturesでは、ハードウェア・ハードテック特化型のVCからみた、製造業・ハードウェア業界動向のご紹介をしています。ご興味のある方はこちらの当社ニュースレターへご登録下さい。

Kyoto Office

〒600-8846 京都市下京区朱雀宝蔵町34番地
梅小路MArKEt 3F

New York Office

2910 Thomson Ave, C760, Long Island City,
NY 11101

Toronto office

20 Wellington St E, Suite 500, Toronto,
ON M5E 1C5