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ボストンがロボティクス、AI、自動化において世界を牽引する理由とは
原文 “Why is Boston A Top Global Hub for Robotics, AI, and Automation for Deep Tech in Manufacturing?” 2024年のディープテックフォーラムがトロント、ピッツバーグ、ニューヨークで開催された後、東海岸のいくつかのハブを訪れてディープテックエコシステムをフォローアップしました。2024年の前半に見たことをまとめます。 まずボストンでは、JETRO NY(J-Startup)のサポートを得て、米国では初めてのMonozukuri Hub Meetupを共同開催し、ネットワーキングセッションに12社以上の日本企業を集めることができました。イベントの一週間前に到着し、春のボストンのスタートアップエコシステムの様子を体感しました。 ボストンの春は日本より遅れて始まるので、3月下旬には京都で、4月下旬にはボストンで桜を楽しむことができました。花粉症には辛い旅でしたが! ボストンは春から初夏にかけて非常に過ごしやすく、快適な環境の中で日本の製造業関係者にモノづくりツアーに参加いただきました。 日本から直行便でボストンに向かい、TechCrunch Early Stageの開催時期に到着しました。この種の広範囲なテーマをカバーするイベントは、特定の分野に特別な関心を持つわけではない一般的な投資家が多く集まる傾向がありますが、ボストンでは違いました。 Early Stage Deep Tech Happy Hour: AlleyCorp、Anzu Partners、Argon VC、Aurelia Foundry、Converge Ventures、Cybernetix Ventures、First Star Ventures、Glasswing Ventures、Hyperplane Ventures、SkyRiver Venturesなどが主催し、ロボティクス、AI、コンピューターサイエンス、物理学、化学、さまざまな工学分野の専門家が集まりました。ボストンのコミュニティは非常にレベルが高く、ほとんどの投資家が創業者または実務者であり、スタートアップが成功するために必要な多種多様な視座を持っています。 ボストンのTechCrunch Early Stageは投資家、起業家、様々なDeep Tech関連の業界の方々が一堂に会したイベントでした。
左: Early Stage Deep Tech Happy Hour 右: HAX Deep Tech Boston
HAX Deep Tech Boston:
MIT関連のハブであるThe Engineで開催された初のHAXミートアップでした。ハードテックアクセラレーターであるHAXは、以前は中国の深圳に拠点を置いていましたが、現在はニュージャージー州ニューアークでヘルスケアや気候変動関連のハードテック創業者をサポートしています。SOSVがボストンに関心を持っているのは偶然ではなく、多くのキープレーヤーがこのハブに関わっているからです。 また、ニューヨークとサンフランシスコにオフィスを構え、バイオテックスタートアップに特化している IndieBio(インディーバイオ) プログラムのチームも、学生、エンジニア、科学者、様々な気候変動の専門家と会うためにボストンを訪れました。 GreenTown Labsは、気候変動関連のソリューションに取り組むスタートアップのための重要な場所であり、他の都市から多くのスタートアップがコミュニティに加わっています。Robotics Summit Expo (ロボティクス サミット エキスポ)
ロボティクスサミット、デバイストークス、DXイベントに先立ち、ロボティクス、AI、製造業の自動化をテーマとした、Monozukuri Hub: JETRO/J-BRIDGE CONNECTS for Global Robotics Innovation in Bostonを共催しました。 Cybernetix VenturesとPittsburgh Robotics Networkという二つのスタートアップにおける重要なハブのサポートを受け、12の日本企業を含む120名にご参加いただきました。 Monozukuri Venturesが投資するスタートアップ企業、ESTAT Actuationの共同創業者兼CEOであるスチュアート・ディラーさんにピッツバーグからお越しいただき、製造業者向けに最新技術を使用した静電クラッチのデモを行いました。この技術により、ロボットはより軽量で安全になります。
MZVのエコシステムや日本のコミュニティなど様々な場所から来た、スタートアップの成長に関わる人々が一堂に介している様子
Robotics Invest 2024 by Cybernetix Ventures Cyb Ventures
2024年のRobotics Investは、主要な投資家、アドバイザー、実務者、顧客、創業者と出会う絶好の機会でした。 2日間にわたり、投資動向、AIのロボティクスへの影響、気候変動テック、ロボティクスの買収状況に関するセッションが行われました。 基調講演には、この地域の有名な起業家が登壇しており、世界中からファンやフォロワーが聴講に訪れました。 ■1日目: シリアルアントレプレナー、発明家、慈善家でもあり、セグウェイやiBOTという世界的に有名な製品を発明したディーン・ケーメン。 動画はこちら:https://youtu.be/aQykTmY-LJ4 ■2日目: ボストン・ダイナミクスの創設者であり、MITの電気工学・コンピューターサイエンスの教授、カーネギーメロン大学のコンピューターサイエンス・ロボティクスの准教授を務めたマーク・レイバートが登壇しました。この二つの大学がロボティクスと自動化の分野で世界的に有名となったのは偶然ではなかったわけです。 動画はこちら:https://youtu.be/MG4PPkCyJig イベントでは、資金調達、スケーリング戦略、大学からのスピンアウト企業に関する討論会や、ネットワーキング、1対1のミーティングが行われました。このイベントは、ロボティクスの未来に関する知見を共有し、業界内のイノベーションと協業を促進することを目的としています。 私がこれまでに参加した業界特化型イベントの中で、ボストンのイベントは間違いなく最もレベルが高かったです。 ロボティクス・インベストの「気候変動テックにおけるロボティクスの重要な役割」のセッションでは、アビー・マレー(AlleyCorp)がモデレーターを務め、レベッカ・フー(Glacier)、フランク・キェルステイン(REBLADE)、ダンカン・ターナー(SOSV)がパネリストとして参加し、製造業のグリーンテック移行におけるロボティクスの役割について討論を行いました。
なぜMonozukuri Venturesは北米の東海岸/五大湖地域に注目するのか?
アーリーステージのディープテックスタートアップに強みとするVCとして、日本企業がオープンイノベーションを推進し、M&Aに向けた戦略的なCVC投資に繋がるフレームワークを提供することが我々の役割だと考えています。「スローバリゼーション」(脱グローバル化)に向かう中で、グリーン移行が進んでいます。 製造業は日本企業が世界をリードするための鍵となる産業です。 また、2024年4月にバイデン大統領が日本を訪問した際に署名した協定は、米国と日本の同盟において重要な節目となりました。そこでは製造業の技術革新、AIやその他のサービスを組み込んだハードウェア製品を生み出すディープテックにおける世界での競争力を協力して高めることが示されました。 2017年から2024年第一四半期までのスタートアップ投資において、全体の投資額は減少しているものの、リアルワールド製品(ハードウェア、エネルギー、医療機器、バイオテクノロジーおよび製薬)を構築する企業への投資割合は増加しています。 しかし、日本企業のリソースは主に西海岸に集中しており、広大な北米全体を十分にカバーできていません。そのため、スタートアップと協業するという目標を達成できていない現状があります。アメリカに駐在する多くの日本企業の担当者に話を聞いたところ、彼らが地域のスタートアップハブのポテンシャルについて十分に認識していないようだと感じました。 さらに、歴史的な円安により、日本企業が海外で事業を維持するコストが上昇し、日本のCVCオフィスがアメリカで活動する際に新たな課題が生じています。 産業のハブは歴史的にアメリカの東海岸および中西部地域に集中しており、日本企業はその地域にあまり進出できていません。そこでの技術革新のペースは凄まじく、急いでキャッチアップする必要があります。
地政学的な問題によって世界がなぜボストンは製造業におけるロボティクス、AI、自動化の世界的なディープテックハブなのか?
ボストンは米国トップ5のスタートアップ都市の中で、常にディープテックのアーリーステージ(プレシード/シード)資金調達における主要なハブとして位置付けられています。最新のデータで裏付けられています。 また、Cartaの別のレポートでは、過去5年間でハードテックスタートアップへの資金調達が増加しており、ボストンはロボット産業関連の製品を開発する企業が多く集まる主要なスタートアップエコシステムとして第3位にランクされています。 ボストンはその深い歴史と学術研究力により、ロボティクス、人工知能(AI)、製造業に関連する重要なディープテック分野で世界的なリーダーとして頭角を現しています。 この変革は、イノベーションを引き起こすユニークなエコシステム、学術機関、その研究を実世界に応用させるためのハブによって支えられています。 https://sabrinasasaki.medium.com/the-state-of-robotics-ai-av-startups-in-north-america-in-2022-cbfdd336ba18 ボストンを技術革新の中心地とするため、米国全土および他国からもディープテック分野のユニークなプレイヤーが集まっています。 ボストンの先端製造技術の急成長の中心には、MIT、ハーバード、タフツ、ボストン大学などがあり、これらの大学や研究機関は優秀な人材を排出し、最先端の研究を推進しています。 MITのコンピューターサイエンス・AI研究所 (CSAIL)は、最先端のロボティクスとAIの研究を行い、製造業に直接適用できる開発を進めています。 ボストンは、製造業におけるサステナビリティと自動化の分野でもリーダーです。自律的に生産プロセスを監視および制御できる統合システムが重要であり、ボストンはそのようなシステムを創出するテック企業の最前線にあります。廃棄物を減らし、コストを削減しつつ高い処理能力を実現するソリューションによる、持続可能でグリーンな製造プロセスに焦点を当てることで、ボストンは責任ある産業のリーダーとしての地位を確立しつつあります。
これは、フレンズ&ファミリー、エンジェルグループ、その他のマイクロファンドの支援によるもので、Cartaのインサイト責任者ピーター・ウォーカーが共有した当社ニュースレターへご登録下さい。
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