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「ソフトウェアのみのスタートアップ」が台頭する米国。日米ロボティクス業界の最新動向
Monozukuri Ventures で海外投資を担当する中島です。日々、製造業にイノベーションをもたらす米国のスタートアップを発掘しています。
5月13日に当社主催で「日米ロボティクススタートアップ動向」と題したウェビナーを開催します。日本と米国の産業用ロボットの最新動向の紹介や、ロボット系スタートアップ5社のライブ・ピッチ、パネルディスカッションなどをお届けする予定です(記事の後半にイベント情報を掲載しています)。
この記事では、ウェビナーでご紹介する内容の一部をお届けします。ウェビナーへのご参加をお待ちしております。
Monozukuri Venturesは日米に拠点を持ち、ハードテック・スタートアップに投資を行うベンチャーキャピタルとして、世界の主要国でのロボティクス業界のトレンドに注目しています。
今回は私たちが主に活動する日本と米国における、業界の強みや課題を明らかにし、今後の動向についてご紹介できればと思います。
日本と米国に見る国の方針や施策の違い
日本では経産省が2019年に、ロボットによる社会変革推進会議を設置して議論を実施しました。
現時点で日本製ロボットのシェアは世界一ですが、中国やドイツなど他国の積極的な取り組みによる追随を考慮すると、総花的ではない優先順位をつけた施策を早急に実行していく必要があると結論づけられています。
また民間団体ではありますが、日本の産業の持続的発展と競争力の強化に寄与することを目的として、ロボットを活用したファクトリーオートメーションのシステム構築等を行うSIerの共通基盤組織「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」が2018年に設立されました。
米国では政府により、人とロボットが共生する世界の到来を前提に、「ロボットとのコミュニケーションに関わる技術の研究開発(ティーチング・インターフェース等)」や「ロボットとの協働を前提としたワーカーの育成」が提言されています。
また基礎研究が米国内で行われるように資源確保・投資を競合国の2倍にするという施策がとられ、National Robotics Councilの設立やManufacturing USA Institutesといった業界団体への継続的な資金提供を行なっています。
National Robotics Initiativesというプログラムがアメリカ国立科学財団(NSF)内に組織され、ロボット統合の科学を発展させるための基礎研究を国として支援しています。
AI技術の活用が遅れる日本
日本の製造業企業における産業ロボットの導入はアメリカに比べて多いものの、AI技術等を利用したデータ活用は遅れています。原因としては人材不足やデータ収集が不十分であるためです。
また自社に特化したシステムの構築を要望する傾向にあり、ロボットメーカーとユーザーを繋ぐシステムインテグレーターの存在が欠かせません。
米国はエンドユーザー企業に、ロボットを自社システムにインテグレーションするためのソフトウェアエンジニアを抱えているケースが多く見られます。また自社に特化したシステムを求めるより、ロボットメーカーが提供するソフトウェアに合わせて自社のシステムや組織を改変する傾向があり、導入のための時間やコストが日本ほどかからないために効率的な側面があります。
異なるロボットを扱うソフトに長じる米国
ロボティクス業界のスタートアップにはハードウェアに主力を置いた企業が多いですが、ロボットを制御するためのソフトウェアに特化した企業も多く見られます。しかしより設立してからの期間が長く、時価総額も高いスタートアップはハードウェアの製造に重きを置いている企業となっています。
日本のロボティクス系スタートアップは、そのほとんどがハードウェアを製造しており、さらに自社で開発するソフトウェアとの連携によって、特定の用途に特化してバリューを提供している場合が多いです。ウェブアプリなどを用いたプラットフォーム機能を持たず、主にハードウェアのみを提供するスタートアップもあります。
米国のスタートアップの場合も、ハードウェアとソフトウェアの両輪で強みを発揮することを目指す企業も多いですが、最近ではロボティクスのためのソフトウェアのみを提供する企業が出てきています。SaaS系ビジネスで覇権を握っている米国ならではの動向と言え、ユーザーフレンドリーなUIによるデスクトップアプリやウェブアプリによって、単独あるいは複数のロボットを制御するプラットフォームを提供しています。このことがシステムインテグレーターを介在させることなく、ロボットメーカーとエンドユーザーを橋渡しする一助となっています。
米国の最新の動きが、高い導入率を後押しか?
日本は世界的な大手ロボットメーカーがあり、スタートアップも特にハードウェアの面で高い技術力を誇ります。一方でエンドユーザーへの導入の際の顧客側のシステムとの擦り合わせに、多くの時間を要している側面があります。
米国は、米国発のトップシェアの大手ロボットメーカーこそないものの、特にソフトウェア部分に強みを持つスタートアップが多数存在します。ユーザー企業もロボットメーカーの仕様やロボットの導入を支援するプラットフォームに合わせて、自社システムや組織を柔軟に整える姿勢が見られます。このことがアメリカにおけるロボットの高い導入率を推進していると考えられ、日本も参考にするべき点が多いように思われます。
日米に共通することとして、スタートアップによる迅速なプロダクト開発が業界の発展に大きく寄与しており、導入側の企業とのスムーズな連携が今後の競争力の強化に欠かせません。
ウェビナーは5月13日(金)の15時から開催
今回の「日米ロボティクススタートアップの最新動向」は、Monozukuri Venturesが、2021年1月から提供している、業界動向やスタートアップの紹介、情報交換の場である「Monozukuri Virtual Demo Day」の第7回にあたります。
今回の「日米ロボティクススタートアップ動向」では、日本のスタートアップをお招きして、ライブのピッチと、インタラクティブな質疑応答の時間を設けます。前回までは米国スタートアップのピッチやデモを、あらかじめ録画した動画としてご紹介していましたが、リニューアルしてお届けします。
はじめに弊社の投資担当から、日米それぞれの国の施策や市場環境、また商習慣の違いなどを明らかにした上で、主に米国のスタートアップについてご紹介いたします。
次に日本のスタートアップによるピッチと質疑応答を実施。最後に登壇者によるパネルディスカッションとして、スタートアップと事業会社との事業連携のポイントについての議論を予定しています。パネルディスカッションのモデレーターには、株式会社シグマクシスにてIoT・ロボティクス分野のコンサルティングを数多く手掛けられている桐原氏をお招きします。
【開催日時】
5月13日(金) 15:00 ~ 17:00
【アジェンダ】
15:00 - 15:30 日米ロボティクス業界動向サマリー(Monozukuri Ventures 中島)
15:30 - 16:15 日本のロボティクススタートアップ5社によるピッチと質疑応答
16:15 - 17:00 日本のロボティクススタートアップによるパネルディスカッション(現地参加のスタートアップのみ)
(モデレーター:株式会社シグマクシス ディレクター 桐原慎也氏)
【ピッチ予定スタートアップ】
株式会社Octa Robotics:自立移動型ロボットと建物との連携ドライバー開発
KiQ Robotics株式会社:たった2枚の写真で作業を自動化できるロボットパッケージとロボットハンド開発
ugo株式会社:遠隔/自律移動型警備/点検ロボットugoの開発、ソリューション提供
ラピュタロボティクス株式会社:ロボットの開発・制御プラットフォーム「rapyuta.io」とソリューション提供
株式会社Robofull:中小加工業向け標準化ロボットパッケージ開発と自動化ソリューションマッチングプラットフォーム
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